パパーノなんなんでしょう

No.2
2003/2/23

The answer is blowin' in the wind. (Bob Dylan,"Blowin' in the Wind")

今回のなんなんでしょうは、朝日新聞の記事からです。
(「平和の花咲かそうよ」朝日新聞夕刊(2003年2月18日付)1面)


花を咲かせましょう

(1)将来、どんな技術者になりたいか

と、常に考えてその姿に向かって努力するように、と若手のうちや、年寄りになっても昇格や昇進の研修ともなると、 しょっちゅう問われるものです。私は、いつも「歌って踊れる技術者になりたいです」とまぜかえすことにしているのですが、 これがまたウケない。それなら、歌って見せてくれ、と言ってくれれば、望むところ、愛用のギターを持ってきて、 歌ならいくらでも聴かせてあげたいのですが、そんなことを言う人は、まったく絶対金輪際ありません。 我々、開発部門は地味な人が多いと思われがちですが、歌のうまい人も結構いて、B'zを得意としている優秀な後輩の一人なんぞは、 頭の回転は強烈に速く仕事はできるし、ボウリングはうまいし、歌もうまい、性格がよいうえに、しかも、 イケメン、そして結婚していて幸せな家庭を築いているという、なんともうらやましい人です。 「ハナ肇とクレージーキャッツ」を得意としていて、性格も悪くひがみっぽい私と違って、彼は決して「歌って踊れる技術者」 などとつまらないことは言いません。

(2)ところで

嘉納昌吉の歌の中でも「花」は私は特に大好きで、宴会の場で盛り上がる曲ではないと思うのですが、カラオケで歌ったりもします。 「泣きなさい、笑いなさい、心のなかに、花を咲かそうよ。」という歌詞は単純だけど、すばらしいと思います。 いつも、開発成果を出そう、事業化という大きな花をさかせよう、と努力しているその心をこめて、歌っています。 でも、なかなかうまくいかないんだなぁ。それはさておき、今回紹介した朝日新聞の記事によれば、 2月17日にイラクのバグダッドで「ハイサイおじさん」など十数曲を演奏したそうです。嘉納昌吉は以前から 「すべての武器を楽器に」というメッセージを掲げています。 今回も、アメリカ合衆国のブッシュ大統領とイラクのフセイン大統領との和解を訴えたそうで、 「世界中の大統領をこのステージに上げて踊らせてみたい。踊れば戦争もなくなるのでは」と話したそうです。 約200人の市民が集まったということで、観客が舞台に上がりメンバーと一緒に踊っている写真が載っています。

(3)でも、考えてみれば

ここで一緒に踊っている人は、平和を願う人ばかりで、きっとそこで踊らなくてもアメリカのイラク攻撃に反対する人でしょう。 しかし、舞台で踊って、そして考え直してほしい人は決してこのコンサートには現れず、 中東での石油の利権を少しでも有利に進めるべく、 怪しげなミーティングをしていることでしょう。聞く耳を持たない人に話を聞いてもらうことはできるのでしょうか。 自分さえよければよい、と考える人に、他の人のことも考えて、と訴えたところで、相手がたとえ何かを考えたとしても、 それが自分になんの得になるか、ということだけでしょう。
この間、終電近くの電車で帰宅途中(飲んでて遅くなったわけではありませんよ)、 ある駅でどやどやと若者の集団が乗ってきました。 赤いつなぎのような服を着て、髪はベッカムヘア、大きな声でしゃべり、奇声をあげていました。 私は因縁をつけられないように、隅で小さくなっていました。 幸い、乗客の誰もちょっかいかけられることもなく、終点の2駅手前ほどで、ドヤドヤ降りていったので、よかったのですが、 正直言って怖いものです。

(4)ペンは剣より強し

というけれど、実際に、暴力を振う人が目の前にいて相手が本気だったら、犠牲者は、十中八九、私になるわけで、 私が筆記具として愛用しているブルーブラックのボールペンはまったく役にたたないことは明らかです。 パソコン3kgの入ったカバンだって、武器にはなるかもしれないけど、HDDがクラッシュしたら、 あるいは液晶がツブれたらまずいですから、自分の命より、こっちを守りに入るかもしれません。
三十六計逃げるに如かず、君子危うきに近寄らず。
相手を説得しようなんて思いません。冗談は通じそうもないし。 ただでさえもウケないから、なおさらです。 だいたい、話がわかる人だったら、暴力を振わないよね。 技術者集団にいると、穏やかな人が多いので、周りを見回して、 こんな人たちばかりなら戦争なんてないだろうに、と思うわけですが、 このところの世間の動きを見ていると、家族を守るために私が楽器のかわりに武器を持つ、なんてことにならないように 願うばかりです。

(5)確かに

嘉納昌吉はロマンチストかもしれません。批判もあることでしょう。でも、嘆いているばかりでなく、 世界は少しでも変えられると考え、危険も顧みずに行動する、彼は、本当に強いリアリストだと私は思うのです。
技術を通して自然と対峙し、市場を通して人の心と対峙する、技術者はリアリストでなければなりません。 技術者は本分に徹し、自分の技術を通じて世の中を変えようと考える。そこまで考えて、はて、自分は何の技術を持っている、 と振り返ってみると、 それほど、強い技術を持っているわけでもありません。寝ない、考えない、風邪ひかない、の三ない主義で力任せに 勝負している私としては、 まったくもって、「ギターで4オクターブのマイナースケールを テンポ200で一気に弾けます(ウソです)」と力なく冗談をいうくらいです。−これがまた、ウケない。


そんなわけで、どんな技術者になりたいか、というより、

こんな技術者に誰がした。

と思い、ちょっと落ち込んでいる今日このごろなのです。暴力反対、戦争反対!


4コママンガ<ハムとラン> とキャラのページ
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