という性格の人は、ストレスをためやすいでしょう。ユーザのところへ行って、サンプルのスペックを少々ゆずってくれませんか、
と恐る恐るお願いしても、笑顔で「ダメです」なんて言われたりして、そのうえ、「価格が高すぎるし、
量産の時は半額以下にしてもらわないと、ちょっと困りますねー」なんて、やっぱり笑顔で言われたりします。
研究所長への定期報告会で、進捗がないことをごまかそうと苦心して作った資料を説明しようとして、
そんな時ほど、資料のポイントがずれていたりなんかして、こちらの言うことをしかめっ面でことごとく否定されたり
、そんなことってありますよね。
「ちっくしょう、言いたい放題言いやがって。」
と思っても、そこでキレたらおしまいですから、なんとか、笑顔でごまかして、1〜2時間しぼられて、
まぁ、技術者稼業もつらいものです。ユーザもまた、彼らのお客さんに同じようなことを、同じように言われているようだし、
研究所長は、取締役に、取締役は社長に、社長は親会社の社長に、親会社の社長は会長に..と延々、どこまで行っても
サラリーマンはキビシイ。なかには、「そんなこと、てめぇらに言われる筋合いはねぇよ!」と部長連中にタンカをきって、それで
抜擢された人もいるらしいですが、まぁ、これは例外中の例外です。
という言葉(今ではもう死語?)がはやるあたりから、年長者も後輩にあまり厳しいことを言わなくなったのではないでしょうか。昔は、 提出した書類に少しでも不備があると、破られて、灰皿とともに投げ返された、 ということです。はるか昔、入社した当時、先輩社員に教わりました。手書きの時代、大変だったでしょう。 最近では、やさしく笑いながら指導するようになり、そんなことで胃を痛める可能性は減ったといえます。 しかも、多少の間違いがあっても、原本はパソコンで作成していますから、たとえ、紙が破られても、 大きなロスにはなりません。むしろ、逆に問題になるのが、校正するために出力したバージョンや、完成したと思い込んで 出力して自分で間違いに気が付いたバージョン、印刷の設定ミスで一字欠けてしまったバージョンなど、自分で 破って捨てる紙の多いこと、多いこと。しかも、最終バージョンを誤って破って、間違ったバージョンを 提出したりなんかして、金額のケタが一桁違う間違いがあったりすると笑いもんです。3千万が3億円になっている決裁書類 とかね。何人もの人に笑われました。あ〜あ、恥ずかしい。
という性格の人はあまりストレスをためなさそうですが、実際は、笑いながら自分の失敗をウジウジ悔やみ、しかも、他人の失敗 をあまりに鋭く的確に咎めすぎて、後で「あぁ、あんなこと言わなけりゃよかった」とウジウジ悩む、 そんな人も意外にいます。しかも、そんな人は、周囲の理解も得られないうえ、陰口を叩かれやすいタイプなのでかわいそうです。 その陰口が本人の耳にはいった日には、ストレスがたまりすぎて胃潰瘍になりそうですよね。
ストレスがメインではありません。最近判明したことですが、胃潰瘍や十二指腸潰瘍の原因として、 ヘリコバクター・ピロリ菌という細菌があげられるのです。この細菌の発見以前によく言われたメカニズムは、 ストレスがたまると、(あるいはそれが原因で食生活が不規則になると)胃酸の分泌が増え、それが潰瘍を 引き起こすというものでした。そこで、H2ブロッカー(注1)と呼ばれる薬剤を服用することで、 胃酸の分泌を抑え、潰瘍の大部分は治るようになりました。これが、ストレス→胃潰瘍説を裏付ける ものと信じられた証拠のひとつなのですが、実際には、服用をやめるとたいていは再発してしまうのです。 対処療法になっているだけで、根本的な治療になっていないように思えます。こういう場合は、原因の推定 を疑わなければなりません。 他のさまざまな状況証拠を総合して考えると、実は、胃潰瘍の原因はストレスとは別にあるらしい、 ということになるらしいのです。ここらの詳しい経緯はサイエンスの記事に詳しいので、興味のある方は 図書館にでも行って読んで下さい。
ピロリ菌が胃潰瘍の主の原因であることをつきとめた B. J. マーシャル が、自ら ピロリ菌を服用し、重症の胃炎を起こして実証した点です。サイエンスの記事を読んだ印象では、 それまでは専門家でもストレスを原因とする説が主流で、しかも、製薬会社にとっては、H2ブロッカーが よく売れるということで、周囲は、何いってんの、という雰囲気だったんでしょう。 ほんなら、俺が自分で実証してやるわい、とキレて衝動的に菌を服用したのか、論証に論証を重ねて認められず、 自分で菌を服用する以外にない、と考え決死の覚悟で服用したのか、定かではありませんが、定説を覆すのは大変なこと だったと想像されます。今でもピロリ菌のことを知らずに、ストレスで胃を壊すと思っている人 が多いのでは?でも、胃炎、胃潰瘍、十二指腸潰瘍の類はピロリ菌の除菌によって治るようです。そして胃ガンの原因 の一つではないかと疑われているようです。日本でも、薬が認可されたようですよ。 (上記URL参照)
ともあれ、一匹狼を自認する技術者なら、自分で菌を飲む、これくらいの気合が必要です。 ヘラヘラ笑っている場合ではありません。 でもね、マーシャル氏のおかげで、ストレスをためやすい笑顔の技術者にも一つ明るい材料ができました。
ストレスがたまっても胃潰瘍になるとは限りません
それとね、多くの場合は、笑いでごまかせます。
注1)
H2ブロッカーを売り物している胃薬もあるので、H2ブロッカーという名前は知っている人も多いことでしょう。
別に、食べ過ぎて水素が出るので胃が苦しいわけではありません。人間が口から水素を出したら、
そこらじゅう爆発事故が起こることでしょう。H2ブロッカーとは、「ヒスタミン
第二受容体拮抗剤」のことらしい。言葉を見ただけ、聞いただけでなんとなくわかった気になるところが、
日本語のよいことろです。
4コママンガ<ハムとラン> とキャラのページ (c)Shimamura,T |
![]() |
![]() |
![]() |
hardy@max.hi-ho.ne.jp |