(2003年9月5日)会議で、試作品スペック未達の改善方策について、議論していたところ、
急に、RF回路関連の研究所所長が
「なるほど、無手勝流でいこう、とこういうわけだな。」と言い出して、「無手勝流でいくか」
「ふ〜ん、無手勝流ね」「なるほど、無手勝流で攻めるか」「無手勝流なら、なんとか
なるかも」「きっと無手勝流だね」と議論が沸騰しました。
会議の最初に、現在考えている解決手段を私が説明したら、「理論理屈を極めて、真正面から
問題を解決するように考えなければダメだ」と怒られました。そこで、一生懸命に
解決のためのステップをリストアップしはじめようとしていました。ところが、一つ項目を挙げるのに
30分、そこから次のステップを挙げるまでに、話があっち行ったりこっち行ったり、
さらに2時間紛糾した後に、先の研究所長の発言が出たわけです。
「ええ?理論的にステップを踏んで解決するんじゃなかったのですか?」
「いや、君たちが理論がわからん、と言っているんだから、ここは、無手勝流でいく
しかしょうがない、ってことだろう」
「・・・・」
とうとう、2つめの項目を挙げるところまでいきませんでした。
この時点で23時15分、またしても終電に遅れないように駅まで走るはめになりました。
その金曜日の夜の会議で決まったのは、土日に出勤して日程を決めよう、ということでした。
通信関係の技術者の会議は多くて長い(なにしろ通信ですから)、ともっぱらの噂で、
私も、毎回それに巻き込まれてしまうのですが、今回はまた酷かった。
そりゃ、説明する側がもっと上手く説明すれば、とか、問題も隙もなくなおかつ説明しやすく
理解しやすくしかも実行可能で日程どおりに解決できることが誰の目にもあきらかな、そんな日程を
あらかじめ作っておけばすんなり行くはず、というのがあるけれど、それにしても、もともと、解決の
手段、ステップ、見込み等は、すでに報告していて判っているはずなのです。
その進捗を聞きたいということで、報告が目的の会議だったはずなのに、まったくもって、一体全体、
一汁一菜、一期一会、五十歩百歩、どうなっているのでしょう。
深夜の出町柳の駅からの足取りは重く、とぼとぼと家に帰りました。そんなわけで、昨日今日(2003年9月6日、7日)
と、暑い中、土日出勤してきました。
見ましたか?出町柳から深夜1時に、涙がこぼれないように、上を向いて歩いていたら(注1)、東南の空で赤く明るく輝いていました。
今年は6万年ぶりの大接近、ということで、ちまたでかなり話題になっているそうで、この夏は
望遠鏡もよく売れたようです。
国立天文台の火星ジャーナルを見ると
火星の詳細がわかります。
火星儀を製作し売っている会社もあります。渡辺教具で、火星の地図
なんてのも、コンビニを通じて売っているようです。火星儀は、これまでそれほど売れなかったらしいのですが、
今年は、生産がおいつかないほどの注文がはいっているそうです。
ところで、火星は、英語ではMARS、おそらくその赤い色から戦争を連想し、ローマの軍神の名がついたのでしょう。
MARSをインターネットで調べて確かめたら、世界の神話についてのホームページを見つけました。Encyclopedia Mythica: Mythology, Folklore, and Legends. −なんとすごいデータベースです。日本の神話についてはどうかと思って、Amaterasuと
入力して検索してみたら、ちゃんと出てきます。私が会社で使っているメインのマシンの名前は"Shakti"、
ヒンズーの神様です。
無手勝流って、どんな意味だか知ってますか?議論が上のように
沸騰していた割には、その場にいた技術者の全員、意味を知らなかったようです。
どんな漢字で書くのかも知らなかったようなので、「教養がたりねぇなぁ」なんて言って、解説を
はじめました。
「宮本武蔵が、剣法の勝ち方の一種として確立したのが最初で、云々」
しかし、2年目社員のS君がうんうん真剣に頷いているので、あわてて、
「おいおい、口からでまかせだ」
実は、私もアヤフヤだったので、調べてみました。「戦わずして勝つ」という意味です。
大阪に行く途中の船で、修行中の若者が武芸の自慢をするのを
見て、塚原ト伝(つかはらぼくでん)が、たしなめたそうな。
血気にはやる若者が決闘しようと言い出し、塚原は船のなかでは迷惑なので近くに見えた島で立ち合おうと
言ったそうです。若者は島がすぐそこまで来ると船から飛び降りた。塚原はその瞬間、船を返させ、若者は
島に取り残されてしまったということです。
これが塚原ト伝の無手勝流です。まさに「戦わずして勝つ」です。
卑怯でしょうか。いや、「生兵法は怪我のもと2」でも書きましたが、
これがプロの仕事ですね。
「手段がなくても、がむしゃらに課題に取り組んでなんとか解決する」、という意味
で使ったようですが、明らかに誤用です。言葉は注意して使わないといけませんね。
しかし、いったいどんな会議をしているんだ、と思うかもしれませんが、本当の話です。
これも、いったいおとーさんが会社でどんな仕事をしているのか、説明しがたいところであって、
なんとかならないものか、といつも頭を悩ませている大きな課題です。
数年前にあったチームは連日、昼一番から夜10時まで居室の片隅の会議スペースで
会議をしていましたが、これも迫力がありました。その日に決めたことを実行する
時間がないんじゃないか、と感心しきりでしたが、どのチームも似たりよったり(注2)かもしれません。
俺がプロジェクトに加わったら変えてやる、と決心していたのですが、結局
この半年巻き込まれっぱなしです。偉くなればなるほど、このような会議が一日中、しかも、連日続くそうです。
今年も新人が配属されてきました。私が入社したときにまぶしかった先輩社員のMさんが、 今の後輩にとっての私にあたるのか、と思うと、少し心もとない気がします。そういえば、 お茶の水女子大学文教育学部の学部長からのメッセージ はなかなか笑ってしまいます。 これにならって言えば
私のような技術者は例外です
ってなもんで。でも会議と週報だけは、なんとかしてほしいなぁ。
注1
「上を向いて歩いていても、涙が流れるときは、ぼろぼろこぼれますよね」
と後輩社員に
指摘されました。たしかにその通りです。
注2
技術用語。特性がよく似ていて差が見られない、という意味。かなり差がある場合にも使われます。
4コママンガ<ハムとラン> とキャラのページ (c)Shimamura,T |
![]() |
![]() |
![]() |
hardy@max.hi-ho.ne.jp |