パパーノなんなんでしょう

No.26
2003/12/31

Some people never say the words, "I love you,"
It's not their style to be so bold.
Some people never say those words, "I love you,"
But like a child they're longing to be told.
(Paul Simon, "Something So Right")

今回のなんなんでしょうは、
日本推理作家協会
です。


一年の計

(1)またもや

夏休みに引き続き、この冬休みも年末の4日間を返上して仕事をするはめになりました。 本当は、休み中に、猛勉強して現状の課題の解決のメドをつけ、来期の詳細計画も仕上げ、特許を10本 書き上げて、スーパー事業貢献をするはずだったのに、惜しかった、残念だった、しょうがないよなぁ。
それにしても、一年の計は元旦にあり、といいますが、激動のこの時代、まったくもって 一年の計画をたてても、いつなんどき計画の前提が崩れてもおかしくありません。 テーマ変更、異動、転勤、リストラと前触れもなくやってきたりするのです。 来期の事業計画はもうほとんど決まっているはずなのですから、自分が戦力内にいるか どうかは、本来はすでにわかっていることなのですが、実際に本人に知らされるのは早くても異動の2週間前、 2,3日前まで知らされないこともあるようです。 それに、市場や事業部の都合など外的要因によって、開発フェーズが変化したり開発テーマの 再編が行われることもしょっちゅうです。
そして、上司がその上司に何を言われたか、上司の上司がその上司に何を言われたか、 さらに、上司の上司の上司が、その上司に何を言われたか(延々続く、サラリーマンはツライ) によってもコロコロ、直属上司の言うことが変わります。スピード重視の昨今の状況ですと、 朝令暮改も、決断の早さや潔さ、正直さなどを示す前向きのポイントになるので、 昨日言っていたことと、今日言っていることと180度変わることもありえます。
従って、自分なりに計画をたてて仕事を進めなければ、

「なんで、こんな仕事を今やってんだ?」
「そんなこと言われたって、やれって言ったじゃないですか」
「なぁに言っとるんじゃ、言われたからやる、じゃ自立した技術者とはいえんやろ、 目的をよく考えて、仕事の優先順位をつけて、取り組まなアカンやん。だいたいジブンはな ぁ・・・(説教3時間)。・・・」
「じゃ、私はいったい、どうしたらいいんですか?」
「それは、自分で考えるんや。」

なんてことになりかねません。
肝心なのは、常に、全体を見て計画を自分なりにたて、 計画を見直し、自分で考え、自分自身のロジックで行動することです。

(2)ところで、

去年、私が新たに決心したことは、洋書を一年に3冊読もう、ということでした。 最初の一冊が、ハリー・ポッター賢者の石−J.K.Rowling,"Harry Potter and the Philosopher's Stone",Bloomsbury(1997) で、これについては、「おいしいかもしれない話」で紹介しました。
2冊目は、 Cem Kaner, James Bach, and Bret Pettichord, "Lessons Learned in Software Testing",John Wiley & Sons,INC(2002)、これは、ソフトウエア・テスターのための、 仕事を進める293のコツが書かれた本です。ソフトウエアテスターとはその名のとおり、ソフトウエア の開発の中でバグがないか仕様どおりか、テストをして拙い点をみつける職業です。
この本は、テストのテクニックよりも、むしろ、プロジェクトの中で の役割の認識や、どんな気構えで仕事を進めるべきか、とか、プログラマとのつきあいかた、 マネージャはどうあるべきか、テスターとしてどうあるべきか、グループやプロジェクトのマネージメント に関するあれこれなど、とても面白く読みました。
2003年の3冊めはD. K. Smith and R. C. Alexander, "Fumbling The Future",toExcel(1999)で、やっと本当の年末、 たった今、ぎりぎりに読了しました。 Fumbling The Futureも読み始めの時に、 「つかみそこねた未来」でちょっと紹介しています。これも大変 面白かった。内容や感想については、そのうち、このコラムで紹介することになるでしょう。 今回は割愛します。
洋書は高いのが難点ですし、英語が苦手な人にはなおさら読む気がしないでしょう。 でも、映画の原作なんかで、しかも、どちらかというと子供向けの本を選べば、読みやすいし、 楽しく読めます。だんだんスピードがあがりますから、辛抱強くがんばってみましょう。
辞書をひかずに、大意をつかみながらスピードを上げて読むことが大事、と言う人が 多いようですが、私はこまめに辞書を引いてます。やっぱり、単語がわからないと、 途中でわけ分からなくなりますからね。本当は単語帳まで作りながらすると、良いのでしょうけど、 そこまでは、やっていません。もの覚えが悪いもので、何べんも同じ単語を引いています。

(3)私は、本を

読むのが好きで、ミステリーやノンフィクション、エッセイを中心になるべく広範囲に読みます。 ただし、基本的に、好きな作家が中心になり、あまり冒険はしないほうです。 だって、出版される本の数ってやたら多くて、本当になんでも読もうと思ったら、 底なしの経済力が必要です。少なくとも家を改造して書庫を作れる程度の 経済力は要求されそうです。私も読んだ本を置く場所に困っています。 そういえば、池澤夏樹が芥川賞を受賞した作品「スティルライフ」 の登場人物で、 定職につかず、アルバイトをして暮らしている人が登場するのですが、その人物が、本は読み終わったら すぐに手放す、と言っていたのを思い出します。その人物は、バーで酒を飲んでいるときに、 じっと、グラスを眺めていて、何を考えているのか訊かれると、
「チェレンコフ光が見えるかもしれないと思って」
と答える、不思議な人物として書かれています。 そんな人に私はなりたい。
それはそうと、今年も1週間に1作品か、それよりちょっと少ないくらいのペースだったと思うのですが、 どれもハズレはなく、特に土屋賢二、林望という二人のユーモアエッセイを発見したことが 大収穫でした。え、遅いって?そうかもね。
それから、「論理学入門」(三浦俊彦著 発行:日本放送出版協会 NHKブックス895 2000年) は目からうろこが落ちる思いで、来年はもう少し論理学の本を2,3冊は読むようにしようと決心しています。 自分が極めて平凡な人間のはずである、という仮定から人類の未来や地球外の生命の可能性について論理的に 考察するあたりは、とても面白いものです。What's Newでも書きましたが、論理で割り切れない、 と思い勝ちな現実のあれこれを、論理的に考えることがいかに面白いかよくわかります。 理科系の人、現役の技術者に勧めます。他に、「ゲーム理論入門」(武藤滋夫著、日経文庫、日本経済新聞社(2001))も分かりやすくよかったです。"General System Theory"も勉強しましょう。直接仕事に役に立たない と思いますが、きっと、どっかで役に立ちます。

(4)さらに年末、

というか、おととい昨日(12月29日〜30日)に読んだ五木寛之の「運命の足音」(幻冬舎文庫、(株)幻冬舎、2003年(単行本発行:2002年))は、大変考えさせられる内容でした。ずっと気になっていたのですが、 文庫で出たので買いやすく、思い切って年末のボーナスの名残で買い込んだ本の中の一冊にいれました。 自身と父母の敗戦体験、朝鮮引き上げのエピソード、それに根ざした社会や宗教に対する考え、 そして、聞こえてくる運命の足音...。
想像できないほど、悲しく辛い体験談と、そこから導かれる考察は鋭く納得のできるもので、 夜更けに静かに感動しながら一気に読みました。生きる勇気がわいてくる気がします。 五木寛之は夜半にしばしば、「運命の足音」を聞くそうです。どこからともなく近づいてきて、やがて 遠ざかっていく人の足音のような、コツ、コツという奇妙な音だそうです。 上述の論理学では、論理的に考えるならば自分は極めて平凡なありふれた人間である、と仮定するのが 妥当ということになりますが、この「運命の足音がきこえる」という節の中で、五木寛之は、こう 書いています。

 人間とひとことで言っても、それぞれにちがう存在だ。人間は人間だが、個人は世界でただ一人の私である。 私にしかきこえない音があったとしても、それは少しも不自然なことではないだろう。

(5)それにしても

読む本の数の多さでは、内藤陳より勝る人はいないんじゃないかな、と思います。新刊だけで、月に100冊は 読むというのだから、びっくりします。面白かったものを読み返す分は含めていないそうです。 ある人にこの話をしたら、「そりゃ、あの人はヒマだからよ。」ヒマかどうか本当のところは知りませんが、 内藤陳といえば、映画俳優ですが、新宿ゴールデン街に「深夜プラスワン」という小さなバーを 開いていて、日本冒険小説協会(参考資料) の会長です。私も機会をみつけて是非一度、行ってみたいと思っています。 なお、「深夜プラスワン」というのは、ギャビン・ライアルの冒険小説で、これは、もう 絶対おすすめ、後悔しません、是非買って読んでください。ハヤカワ文庫から出ています。 私も、大学生のときに一時期、日に2冊のペースで読んでいましたが、あまり続きませんでした。 ハードボイルドばかり読み漁っていたのも、その時期で、レイモンド・チャンドラー、ダシール・ハメット、 ロバート・B・パーカーなど、特にチャンドラーには影響を受け、 "Long Goodbye"や"Play Back"など、ペーパーバッグでも読みました。海外の小説は訳者がうまいと、 魅力がプラスします。チャンドラーは清水俊二の名訳がその人気に一役買っていると思います。 このコラムでも、何度か引用していますが、その魅力が少しでも伝わればいい、と思います。


まだまだ、本の話はつきません。たくさん紹介したい本がありますし、それぞれの 思いを書くには、あまりに時間が足りません。また、いずれ。ほとんど日記と化している"What's New"にも、読んで面白かった本は どんどん紹介していきますから、こちらも参考にしてください。で、私の2004年の目標は、

ゴールデンウイークも夏休みも冬休みも、ちゃんと休む
前後に有給休暇もひっつける

って、ささやかなんですけど、どうなることやら。多分、2004年も引き続きサバイバルが続く。
なにはともあれ、明けましておめでとう。2004年がよい年になりますように。


4コママンガ<ハムとラン> とキャラのページ
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