もう、あっというまにすぎ、おそらく、若手社員の間では、新年会と歓迎会と送別会とスキー旅行と
海外旅行、延期に延期を重ねた忘年会ってやっぱりこれも新年会といった楽しい記憶しかないかもしれません。
本当に楽しい時間はあっという間に過ぎ、いつのまにかセッパつまったことになるのは、
私のようなスーダラ社員でなくてもきっとあることでしょう。
そんななか、
来期のテーマや予算、人員配置など、来期の事業計画
がほぼ固まってきて、たいたい、もう来期の
あなたの運命は決まっている、といっても過言ではありません。ひょっとして、
本来進めなければならない先のテーマの隠れ蓑にするために
、事業部マター(注1)を引き受けて工数仕事でキリキリマイする「人柱」
に配置されているかもしれないし、予算はないし部下もつかないけど
新規開発テーマを探すミッションを背負った
「御柱」(注2)に配置されているかもしれないし、
あるいは、火中の栗を拾うべく、どうしてもうまく行かなくて
将来の絵さえ上手にかけないプロジェクトの新マネージャー「節分の鬼」(注3)として
配置されているかもしれません。
入社して2年目のころだったか、当時の研究所長数人が人員配置の検討を所長室の
隅でしているのを偶然見てしまいました。まるで、将棋のコマをあっちへやったり
こっちへやったり考えているような感じで、
ウラの世界を見てしまったような怖い感じがしたものです。
そういえば、何も考えていないともっぱらの噂のある主担当は、実は土日の夜は机に向かって2〜3年先の
人員配置をあーでもないこーでもない、と、書いては消し、書いては消し、検討しているらしい
のです。
急に人が欲しいと言っても、よっぽどのことがない限り無理だから、
数年先の未来の組織の姿を決めておいて、その実現のために一歩一歩布石を打っていくわけです。
ただ、自分が動かされてしまったら、おじゃんですけどね。
はいると、すぐに節分です。京都は吉田神社
では、盛大に節分祭をします。すぐ
近所なので、毎年お参りするのですが、参道からずらっと夜店が並び、人で
ごったがえして、賑やかで楽しいものです。夜店はおなじみのタコ焼きや、
イカ焼き、とうもろこし、フランクフルト、ジャガバターのほか、
行列のできるタイヤキ屋、行列のできる焼き芋屋、節分につきものの
いわし、などいろいろあります。変わったものというと、
「ベーコンエッグたいやき」。その名のとおり、たいやきの中にアンコのかわりに
ベーコンエッグが入っているというしろもので、大抵の人は、聞くと眉をひそめますが、
意外においしいものです。年々人気が出てきたらしく、店の装飾も派手になり、
行列ができるようになり、作り方がぞんざいになっているようにも思えますが、今年もきっとでて
るでしょう。いくつか買っておいて次の日に電子レンジで温めて朝食にしてもいいものです。
最近の焼き鳥は、ほとんど、
でっかいモモ肉を串刺しにして焼いた一本500円ほどの
「博多名物ジャンボ焼き鳥」
というのが幅を利かせていて、それは確かにおいしいのですが、昔ながらの焼き鳥
も復活してほしい、と思います。
ステーキの屋台もあります。高いので、試したことはないのですが、
おととし、去年と店の数は増えているところをみるとそれなりの人気なのでしょう。
そういえば、トルティヤみたいな薄いしっとりとした皮に、焼いた肉や野菜を
詰めたトルコの名物料理(名前を忘れた)もおいしかった。しかし、なぜ、
外国人の店番は、女性が買うと、にっこり笑って一言二言話しかけたりするのに、私には
にこりともせず、一言もなくぶっきらぼうなのだろう。
かわみち屋も繁盛しています。広いスペースをテントで覆って、
長テーブルと長いすを並べてあって、たくさんの人が、熱いソバを白い息でふぅふぅやって
食べています。呼び込みのおっちゃんがスピーカーでがなりたてるのが、にぎやかで面白い。
「年越しのぉ〜、ソバを〜、食べてこそ、云々」と言っているのですが、旧正月にあたるので、
「年越しそば」なんですね。
日本酒の店も1軒出ていて(松井酒造(株))、私は毎年そこで
「富士千歳」のにごり酒をもらいます。たいがい、向かいで、いわしを売っています。
見本を七輪で焼いているのを1〜2本もらって、かじりながらの一杯は悪くありません。
たいてい、この日はしんしんと冷え込んで、雪が降ります。
去年はそれほど寒くなかったので、ちょっと物足りなかったのですが、今年はどうでしょうか。
にごり酒は甘くて少し味が濃いのですが、雪がちらつく寒い夜に、ごったがえす人と
屋台のオレンジ色の電球と立ち上る湯気を、ぼんやりと立って眺めながら飲むのは、
本当にうまいものです。
日亜化学と中村修二カリフォルニア大教授の訴訟問題で、200億円の支払い命令がでましたが、
新聞も一面で大きくとりあげ、世間に与えた衝撃は大きいですよね。
「一億円以下だったら、日本中の技術者にプロ野球選手か芸能人になれといいます」
と言っていますが、なんだか、確かに、契約更改でもめる大リーグのスター選手と似た
風格です。プロ野球選手のようになったら、
最近の成果主義をもっと進めるような方向になって、契約で年俸が決まるようになり、
毎年使えない若手技術者はリストラされるし、まぁ、のんきに構えてはいられなく
なります。
中村先生の書いた本
を読むと、自分の考えを貫く大事さ、技術者の夢とその実現のために、いかに
日本の会社組織がまずいのか、技術者の地位がいかに低いか、それらのことに対して
もっともっと怒らなければならない、ということが書いてあります。そうだそうだ、と
思いながらも、組織の一員として飼いならされて怒りを忘れた自分
を恥ずかしくも思い、ちょっと複雑です。節分を機に心を入れ替え、
怒りまくって頑張ろうって決心したのですが、しょっちゅう決心している私は、
「そういうのは決心って言わないですよ、それは、言ってみただけって言うんですよ。」
と言われてしまいました。
は大学では、ちょうど期末試験にあたっていました。学部はちょうど
この吉田神社のすぐ横にあります。にぎやかなお祭りも、
曇って雪がふって薄暗い雰囲気が感じられ、かえって空虚な寂しい気が
したことを思い出します。成績は悪くて卒業も危なく、これといって
得意なものもなく、社会に出ていろんな人と
うまくやっていける自信もなく、「いったいこれからどうなってしまうのだろう」
とぼんやり考えながら、点数を取れる見込みのない試験を受けに、
節分の雑踏をかきわけ、教室へ急いだことを
思い出します。
今から思えば、真正面からそんな気持ちにぶつかって、ちゃんと勉強しておけばよかった、
と思うことがしばしばで、つまらない感傷に甘えていた自分が腹ただしい。今、周囲の人
を見ていると、さすがに大企業に勤めている技術系のエリート集団だけに、
前向きにやるべきことに取り組むしっかりしている人が多いので
ちょっと差を感じてしまうのです。
「学生のころの自分は何事にも一生懸命トライして充実していたし、
ほこりに思う」という同僚の熱っぽい話を聞くと、ひそかに
「俺は、いまだに自分がいるべきでない場所にいる」
と思い、少し悲しくなってくるのです。
この2月から、今まで何年間か一緒に仕事をしてきた盟友といってもいい同僚が
転勤することになりました。なにがしかの気持ちを共有できる友達が近くにいなく
なるのは寂しいものです。彼がオフィスの机の上においていた「ひだまりの民」
を譲り受けました。
これで、あいつと同じくらい仕事ができる
ようになるはずって、そんなことはないか。
今回は少し感傷的になりすぎましたか。すみません。
4コママンガ<ハムとラン> とキャラのページ (c)Shimamura,T |
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注1)事業部マター
というのは、本来、事業部がやるべき仕事のことで、研究所でしなくても事業部で人をかければ できるやん、という内容の仕事です。しかし、確実に成果を出せるし(出せないこともありますが) 事業部から最も期待されて有難く思ってもらえ、しかも信頼もいただけるという特徴があります。 こんなテーマをプロジェクトでかかえながら、自主で先の長いリスクの大きい仕事を(こっそり)進める というのもマネジメントの方法です。しかし、結局、目の前の仕事にかまけて、後、技術の焼け野原のように なってしまうこともあり、両刃の剣という側面もあり、慎重にする必要もあります。
注2)御柱
は諏訪地方のお祭りで、荒っぽいことで有名です。ここでは高貴な(上位職能の)人柱という意味 以上に特に意味はありません。
注3)節分の鬼
つまりは悪者の役で、みんなにマメを投げられる散々な役回り、という意味です。 ビジョンがない、コアコンピタンスがない、アイディアもエビデンスもない、 事業部からの信頼もなければ、研究所長からも信頼されない、といった、 プロジェクトを任されるハメになるかもしれないのだよ、だれでも、みんな。覚悟 が大事。