というと、上が自分の育成をどう考えてくれているんかわからん、現在の
自分の使われ方では、将来をみこした戦略や過去からの一貫性が感じられへん、
使い捨てにされているんちゃうか、というのが代表的でしょう。
そんな声を吸い上げ、人事も一生懸命工夫して、現在の自分をみつめ、
将来の姿を明確にし、それに向かって努力するための
ツールとして、帳票のフォーマットを作ってくれます。最近は電子化が進んでいるので、
ますますいろんな角度から自分を見直し、具体的に綿密な計画をたてられるように
工夫されています。
それでも、記入するほうは、記入するほうで
「こんなん、どうせチームリーダーも
プロジェクトマネージャも全部見て把握でけへんやろうし、
見たからといって、ナンもでけへんやろうし、
ぜんっぜん意味あらへん」
と思っていい加減に記入するので、せっかくの帳票も
活かされず、結局、上に書いたような不満は消えないばかりか、
ますます大きくなります。
それで、人事がどうするか、というと、答えはひとつ。
さらに複雑なフォーマットを工夫して作ってくれるのです。
20年後の自分がどうありたいか、考え、現在の自分と照らし合わせてギャップ分析を 行い、何をするべきか決めて取り組むのが重要だ、ということで、 毎年、毎年、同じことを考え、しかし結局実行できずに一年が過ぎ、いつの間にか、中年に突入し、 あと、20年か、もう、会社辞めているかもな、でも住宅ローンは残っているし、 子供はひょっとして、まだ結婚せずにパラサイト生活をしているかもしれないし、 いやむしろ、早くに結婚して孫ができていたりして、家内が入れ込んで、高いベビー服やら かわいい帽子やらポシェットやら、最高級のベビーベッドにチャイルドシート、 ベビーカーなどなど買い与え、で、いつまでたっても、支出は減らず、かえって増えるばっかり かもしれないし、子会社の会社役員か、これまでの経験を活かしてコンサルタントとか、 シルバー人材派遣 とか、それとも出町柳の駐輪場のおっちゃんか、 他になにか仕事あるかな、ラーメン屋なんか始めても競争が激しそうだし、 ただでさえ頼りない記憶力では注文聞いても忘れそうだし、 無理な注文もハイハイと受けてしまいそうだし、 できなかった結果に対して笑ってごまかすわけにはいかないだろうし、 スズメの涙の委託研究金でこき使われそうだし、 いやいや、とにかく、どんな声がかかっても私なりに生きがいをもって、 クリエイティブに働いてみせるぞ、などと 考えている人も少なからずいることでしょう。
あるコンサルタント会社と仕事をすることがあったのですが、
築地の近く一等地にある少し古いビルの一室に事務所を構え、
社員はその社長と奥さんだけ、パソコン数台をところ狭しと
並べて、米国のソフトウエアの販売代理店や、そのソフトウエアを
使ってデバイスの特性を改良する方策を提案したり
設計やシミュレーションを請け負うなどの技術的なコンサルティングや、
市場動向に関するコンサルタント、ハンドブックの監修や、
複数の企業の顧問をするなどして、年収は7000万ほどあるそうです。
「高い、という人もいますけど、こっちは寝る時間削ってやっているんだから
そのくらいは当たり前ですよ。」
もう、年は50歳を過ぎた人なのですが、日に焼けた大柄な体格で、
十分に実績があるうえに、その利用の仕方を心得ていて、自分の要求を通すことに慣れており、
輸入タバコをひっきりなしに吸いながら
大きな声で少々勝手なことを喋る
、雰囲気たっぷりの人でした。
私は単に、あるソフトウエアを購入しに行ったのですが、市場情報やら、
業界の構図やら、訊けばタダでいろいろ教えてくれました。
「君は自分で苦労して一生懸命やっているからね、だから、こうしていろいろ
教えてあげるんだよ。何もせずに、ただ教えてくれって来ても、
金積まれたって私は知らん。」
60歳になったら引退して会社をたたむ、と言ってました。今の仕事で稼ぐだけ
稼いで、大学に入りなおしたい、ということです。すでに学会でも
有名で、第一人者と目されている方なんですけど。
これまで、企業で身を削って常に全力で突っ走って仕事してきて、
もっと研究して深くつっこみたいところもあったができなかったし、
学位をとったりする時間もなかったし、
その分野で有名なアメリカの大学に入ってもう一度勉強と研究をゆっくり
やりたい、だからそれまではキリキリ仕事をするのだ、と言われていました。
「誰がなんと言ったってキッパリやめますよ。」
そうです、一度きりの人生ですから、自分でキッパリと決めていきたいものですよね。
この6月8日に金星が太陽の前を横切る「太陽面通過」という現象が
観察できるそうです。
日本では130年ぶりだということで、珍しい現象です。詳しくは、
国立天文台の
ホームページで読んでいただければわかりますが、地球の軌道面と金星の軌道面が
3°くらい傾いているために、金星が地球の軌道面を横切るときにちょうど、太陽と金星
と地球が一直線に並ぶという、組み合わせで初めて観察できる現象です。
8年後の同じ時期にもう一度観察できるのと、その後は、2117年、すなわり、113年後
までありません。なお、このときも、8年後の2125年にまた見れるそうです。この約120年後
のあと、8年後、その次がまた約120年後、というサイクルは続くのですが、3089年12月18日に
起きる金星の太陽面通過は、8年の繰り
返しが無い単独の現象とされているそうです。
3089年!!
しかも、日付まではいっているとは。いったい、そのころ人類はどうなっているのでしょうか。
こういった、天文のシミュレーションはかなり前から計算されていた
と思うのですが、ほんと、電子計算機がなかった時代にはどうやって計算していたのでしょうか。
誰か知っている人は教えてください。
やっぱり計算尺でやっていたのでしょうか。それとも、最近になって、コンピュータを使う
ことで初めて計算できるようになったのでしょうか。
今の技術者は、一昔前のスーパー
コンピュータにコンパラなパソコンを一人一人手元に持っているはずで、
それだけ知的生産の能率はあがっているはずです。私の父親の時代では、まだ、
単なる計算機でさえ高価で、計算尺を使っていたくらいなのですから。
しかも、コンピュータの計算能力はどんどんあがっています。
計算速度のベンチマークは今回紹介したHPで
されています。
TOP500のベンチマークリストを見ると、日本の「地球シミュレータ」が突出して高い
性能です。なんとピークで40960GFlopsも出ています。
立花隆の本で「電脳進化論(注1)」というのがあって、この本によれば
1991年当時で4.0GFlops(ギガフロップス(注2))が最高速だったようです。
この12年間で10000倍の計算
速度が得られているということになります。
もっとも、これは突出した例で、
当時のNECのスーパーコンピュータSX-3が3.9GFlopsで、今のSX-6が1500GFlopsなので、
だいたい、350倍くらいです。クレイ社の製品で比較すると1500倍くらいなので、
平均的には500〜1000倍か、そのくらいの
進歩だと思えばいいのではないでしょうか。
「電脳進化論」には車メーカがこぞって、スーパーコンピュータを導入している事例が
紹介されています。10年少し前、トヨタは4台、日産が2台、マツダが3台のスーパーコン
ピュータを導入しています。だいたい各社あわせて3GFlopsの計算能力を持っている
ことになっていたそうです。その当時は主に衝突解析に使っていたそうです。
マツダの当時の情報システム部長の岡田氏の言葉として、
「先だって、7、8年後にどれくらいのコンピュータが必要になるか需要予測しろと上から
いわれて、やってみたら、いまのスーパーコンピュータに換算して200台くらい必要だという
結果が出た。そう報告したら、そんなバカな、といわれたが、私は結構当たっているように
思います。」
と書いてありましたが、
たしかに、結構あたっていますね。多分、現在、トヨタは合計で1500〜3000GFlops程度の
スーパーコンピュータを所有しているのではないでしょうか。当て推量ですけどね。
多分、そのころには難しかった燃焼シミュレーションなどもできるようになっている
かもしれません。
しかし、今なら、たくさんのパソコンを
並列に走らせるクラスターマシンで1000GFlopsを出すことも可能なので、つまり、本気なら、
研究所中の遊んでいるパソコン、および、所員のパソコンの
空いているCPUパワーのすべてをクラスターに構成して働かせれば、
10年前のトヨタが持っていたスーパーコンピュータの100倍程度の
腕力が手に入るかもしれません。
さて、これから10年後はどんな世界になっているのでしょう。
結局は、知力も知識も、どれだけ身につくか、というと体力と根性で決まる部分があります。
ということは、これからの日本は知恵の力で勝つんだ、といっても、
つまるところ最終的には体力勝負です。その上、以前は、知恵を絞って難しい問題を単純にして、なるべく
スマートにして解くのが正解だったのですが、最近は、難しいまま、
計算機の腕力にまかせて解くほうが能率がよく、直接的な結果が得られるというのがトレンドです。
結局は体力勝負だ、というのはなんともつまらない話ではありますが、腕力を鍛えるために知恵を絞り、知恵を絞るために、腕力を鍛える、というのが
これからの技術者の生きる道です。ちなみに私は、
片手腕立て伏せができます
左手だけしかできないのだけどね、2回しかできないのだけどね、肩の骨がきしむけどね、結構無理しているけどね。
大事なのは、早寝早起き、いい食事、そして、適度なアルコール
なんにしても、節度が大事ですよ、若手技術者諸君、はっはっはっはっは...。
4コママンガ<ハムとラン> とキャラのページ (c)Shimamura,T |
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注1)電脳進化論(立花隆、朝日新聞社(朝日文庫)1998年)
は、手術シミュレーションや、本文でふれた天文のシミュレーションや、原子力、素粒子物理
などの事例がたくさん紹介されていて面白い内容です。文庫本としては1998年に
発行されているのですが、1991年4月から1992年6月まで科学朝日
に連載されていたものをまとめたものらしいのです。今回の最後のパラグラフは
10年くらいの
時間があちらへ行ったりこちらへ行ったり、わかりにくい文章にしてみましたが、
その目的の参考資料としては、もってこいの本でした。
図や写真もたくさんあって
とても面白い内容でみなさんにも是非読んでほしいのですが、
この変化の激しい時代に、ある部分で急速に内容が古びていることが
わかります。そんななかで古びていないのが次のような言葉です。
「数値実験でも、実物実験でも、実験データと現実の間には必ずズレがあるものです。
そういう現実とのズレは、現実体験を通して得られる経験知によってしか正しく把握できない。
コンピュータの絵だけを見ていると研究者はダメになっちゃうんですね。思考が止まって
しまう。やはり人間というのは、ものに触れ、リアリティーに触れていないと
ちゃんと考えられないようになっているんです。」(桑原邦郎助教授(当時))
体も使って考えよう。
注2)ギガフロップス
フロップスというのが、計算機の能力を測る単位で、1秒間に何回浮動小数点演算ができるか
という数値です。1秒間に沢山の計算ができるほうが、計算能力があるということですから、
数値が大きいほうが、よいということです。
MFlops(メガフロップス)=1秒間に100万回の浮動小数点演算
GFlops(ギガフロップス)=1秒間に10億回の浮動小数点演算
です。
なお、みなさんのパソコンで使われている「Pentium IV」や
「PowerPC G4」で5〜7GFlopsらしいです。本当かって?いろいろ、調べたのですが、
直接の資料はすぐにみつかりませんでした。1クロックで1命令実行したとして、
しかも、1クロックで浮動小数点演算ができれば、クロック3GHzで3GFlopsなので、
ちょっと納得いかない数値でもあるのですが。インテルのサイトでは
SPECfpで表示されていて、flopsとの関連がよくわかりません。
Pentiumの仕様書を読めばわかるって?
Technical Documentationからアプリケーションノート、データシート、
デザインガイド、マニュアル、大量の文書がPDFでダウンロードできます。英文数百ページ
もあるドキュメントがずらり並んでいます。
読みますか?仕事で関係している人は、ボロボロになるまで読んでいるに違いない。
やっぱり、体力と根性だ。