飛ぶように時間が過ぎていると、いったい全体、私の周囲だけ時間のスピードが速くなっているのか
疑いたい気分です。逆に、周りの人から見たら、私の動作がすごくゆっくりに見えている
かもしれませんね。
「パパーノさん、何だか落ち着いて座ってますね?」
「何を?こんなに慌てて、しんどくて辛くて泣きそうなのに。」
「へえ?フフン。それにしてもなんだか、余裕たっぷりですよ。」
「そんなことはないハズだ。まだ週報だって出してないし、出張の準備もできていないし、
今日は歓迎会もあるから、もう時間もないんだ。その上、この後S君と打ち合わせを
しないといけないし、しかも、今週も進捗は思わしくないし、
出張になんて行っている場合じゃないような気もするし、
その上、研修の論文だって資料だって、まったく書けていない。もうすぐそこに締め切りが迫っているというのに。」
「フフン、いやいや、まだまだ、追い込まれていませんね。」
だから、さ、私の周囲の時間だけ速く過ぎているからそう見えるだけなんだってば。
で、関西国際空港で出発前に売店でうろうろしていたら、「プレジデント」の11月1日号(Vol.42, No.20)
が目に留まりました。「「緊急中毒」「グズの大忙し」から脱出する法」というサブタイトルで、
大きな字で「なぜか結果が出る人の「24時間」」と書かれていて、ユニクロの
ファーストリテイリング会長兼CEOの顔写真が載っています。
思わず買って、行きの飛行機のお供にしました。
参考になる内容ばかりで550円はお買い得でした( 注1)。エグゼクティブが
どんな一日を過ごしているのか、−本当かどうか知りませんが−、興味深いものが
ありました。かなりお勧めです。
食べ物のことばかり書いて、今回も続けるのは、このコラムの品質問題
であるような気もするのですが、今回も、ドイツに出張へ行って帰ってきたばかりで、
しかも何度もしつこく"What'sNew"に書いたとおり、アムステルダム経由
は初めてなので仕方ありません。多分、次回も食べ物の話になりそうですが、
食欲の秋、許してください。
どうしても食べたかったのが、ハーリングという生のニシン。
刻んだタマネギをはさんで尻尾のほうからつまんで、
上を向いてまるごと食べるのが正調だ、と聞いています。空港で屋台が出ているのを想像していた
のですが、まったくカゲも形もありません。チーズやら食料品のおみやげを売っている店で
パックした冷凍のものを売っていますが、本物かどうかわからないものなぁ。
実は、大学のころに読んだロバート・B・パーカーのハードボイルド探偵小説、スペンサーのシリーズ
「ユダの山羊」(ハヤカワミステリ文庫1987、原作は1978)(注2)の中でアムステルダムに寄っていて、もう一人の
主人公ホークが街の屋台でおいしそうに食べているのを憶えていて、それでどうしても食べたいと
思っていたのです。
自分でも料理をするし、飲んだビールやウイスキー、食べ物などの細かい
描写がされています。シチュエーションに応じて飲むもの、食べるものが変わり、
気持ちや雰囲気がよくあらわされているように思います。登場人物も嗜好やファッションに、
その人のものの考え方や性格、社会的地位が表現されています。
このシリーズは1973年から続いていて、つい最近、31作目"Bad Business"が出ている人気シリーズで、
ハヤカワミステリ文庫で買うことができます。どれをとっても面白いのですが、シリーズで
大河ドラマのように続いているので、できれば、最初のほうから読んだほうが、よりいっそう楽しめると思います。
で、スペンサーがシリーズの最初のほうで愛飲するのがオランダビールのアムステル・ビアで、
上で紹介した「ユダの山羊」でも、2度、ロンドンで飲んでいます。
このサイト内であちこちで引き合いに出している
マイケル・ジャクソンの「世界ビール大全」(山海堂,1996年)によれば、アムステル・ビアも
アムステル1870も、ハイネケンと同じ星1〜2で、それほど騒ぎ立てるほどのものでもないのかも
しれませんが、しかも、アムステル社はハイネケンに吸収されてしまっているので尚更なのですが、
それでも、日本ではまったくもってみかけたことがありませんから、楽しみにしていました。
2時間ほどあったのでパスポートコントロール(注3)を通ってから、国内線側をうろうろ探していると、
セルフサービスの素敵なサンドイッチバーが
あったので、ツナとスモークチキンの薄切りをはさんで乾燥タイムがふりかけのようにかけてある
大きな三角形のサンドイッチを食べ、アムステルの"MALT"を飲みました。チョコレートのような
甘めのフレーバーと苦味が利いていて悪くないな、と思いました。
飛行機の中では、250ccの細長い缶のハイネケンしかなく、
しかも、途中で品切れしてしまう、というお粗末さでがっかりしていたところで
ついにアムステルにありついたわけです。
まぁ、サンドイッチともども、味は悪くないし、腹も一杯になったのですが、
もう少し、うろうろと探し回るとレストランバーがあって、
メニューを見るとアムステルの"1870"があるので、そこでまた、一杯いただきました。
こちらは、飲みなれたラガービールの味で、独特の香りがプンと立って、
すっきりとした苦味がなかなかいけます。
私が狙っていたのはアムステルのほかは"Bland"と"Christoffel"だったのですが、まったくカゲも形も
ありませんでした。ちなみに、これらのビールは今回紹介したOranda Netのコンテンツ・
Dutch Beer
に写真入りで紹介されています。
それにしてもいくらさがしてもハーリングが見つかりません。
オランダ人は自分たちのローカルな味を宣伝するつもりはないのでしょうか?
あきらめかけていたところ、南ラウンジにあるSeafood&Barにサンドイッチ、あるいはラップで出している
のをやっと見つけました。無理して腹につめこまずに、帰りに食べることにしました。
国際線への乗り継ぎとは全然逆方向でしたが、PCや本が入って重たいカバンと
チョコレートばかりの重いおみやげをひきずりながら、
わざわざ、南ラウンジまで行きました。ハーリングにタマネギをちらしたものをパンにはさんだ
サンドイッチを食べました。噂にたがわず、生臭いことはなく、少々の塩味で大変美味しい。
しかも、黒いセーターにジーンズ、空色の
マフラーを巻いた栗色の髪の素晴らしい美人が同じものを食べていて、ボーっと見ているだけで満足。
声でもかけようか、と思ったらいつの間にかいなくなっていました。
ウナギの燻製も同じく名物でおいてありましたが、次の機会があるかもしれないし、その時の楽しみに
とっておくことにしました。
ただし、ビールはやっぱりハイネケンしかありませんでした。瓶の「普通」と、瓶の形をしたアルミ缶の
「スペシャル品」の2種類ある、ということで、スペシャルなほうを飲みました。
残念ながら私には差がわかりませんでした。
その後、気のきいたお土産を探して小一時間アッチコッチうろうろしていたところ、
スキポール空港内には美術館があって、
そこの記念品がちょっといい感じだったので、ゴッホなどの有名な絵をプリントしたマグネット
をいくつか買いました。気がつくと、もう、ボーディングタイム間近になり、
あわてて最後のアムステルを飲もうと、
すぐ近くのセルフサービスのカフェで、ブリーチーズとトマトをバケットではさんだ
30cmほどもあるサンドイッチを所望しました。ここでも、
やっぱり、ハイネケンとアムステルのMALTしか
選択肢がありません。こんなときは珍しいほうをどうしても選んでしまう−
MALTを飲みました。不思議な味のビールだな、と、このときにしげしげとラベルを見たらアルコール度数0.1%
だと判明しました。
予習が足りませんでした。むむむむ...。
ところで、改めて調べてみたら、
1973年の1作目の「ゴッドウルフの行方」
のときスペンサーは37歳で、なんと、今の私と同じ歳ではありませんか。彼は、もっと、ずっと
年上のように思っていたのですが....。
だんだん自分が、自分にとってのヒーローの歳と同じか上回っていきます。彼のように生きたい
と願いながら、時間ばかり過ぎていって、自分自身は全然成長していないように思うのに。
なぜ?
答えは風に舞っている
なかなか一人前の男になれませんね。
4コママンガ<ハムとラン> とキャラのページ (c)Shimamura,T |
![]() |
![]() |
![]() |
hardy@max.hi-ho.ne.jp |
注1)他にも
"心の健康「うつ病社員が激増」30代を襲う負担と不満"や、"無業青年「ニート」の意外な素顔"
など、面白い記事がありました。NEETというのは"Not in Education, Employment or Training"
の略で、フリーターでも失業者でもない層らしく、9月に厚生労働省が発表したデータによれば、
日本に52万人もいる、ということです。
ここでは詳しくは触れませんが、「ニート フリーターでも失業者でもなく」
(玄田有史・曲沼美恵著、幻冬舎)がこの7月に刊行されているそうで、すぐに知りたいという興味ある方は
こちらを参考にされればよいかと思います。
注2)いいセリフがたくさん
あります。
2つばかり引用しましょう。
「敵の意図に基づいて計画をたてることはできないのだ」私がいった。「相手がやる可能性が
あることではなくて、相手になにが可能であるか、に基づいて計画をたてなければならない」
「おれは、時には推量し、時には自分の勘を信じ、時には気にかけない。自分にできることをやるだけだ。」
注3)不意に
予期しない言葉をかけられると、ドギマギしてうまく返事できませんよね。
入国審査の前、列が長かったので、こう訊かれたら、ああ答えよう、ああ訊かれたら、こう
答えよう、と英語を準備していて、いざ、パスポートを渡すと、
「パパーノサーン、オーゲンキデースカ?」を声をかけられ、「huh?..えっ・・・と、
I'm fine thank you.」なぁんて答えて、動揺しているところで"destination?"と訊かれ、
なんだかオランダ語訛り(多分、おそらく、きっと)が強くてすぐに聞き取れず、何べんか訊き返す
ハメになり、
われながら機転がきかないなぁ、と少しがっかり思うのでした。