パパーノなんなんでしょう

No.70
2005/ 10/20


How many nights you think that
you can do what you been doin'?
(Paul Simon, "Run That Body Down")

今回のなんなんでしょうは、
The Super-Simple pocket size mp3 player!
です。


お体を大切に

(1)昔から

泣く子とお客様には勝てない、とよく言いますが、 研究部門にとってお客様はいったい誰なんだろう、というのがまずもって問題であります。
最近の社員はみな教育されてしまっているものだから、あなたにとってお客様とは いったい誰ですか、と訊けば、100人に99.9人まで、「周囲にいる人全員が お客様です。」と全体最適優等生的な答えをします。 たしかに、それはそれで正しいのですが、あえてお客様は誰か、と尋ねるのは、 アメリカのサウスウエスト航空の例(参考資料)を 持ち出すまでもなく、お客様を絞れ、という意図があるのです。人生は有限だし、 キャパもスキルも有限ですから、誰のために何をするか、ということを明確にしておくことは 大事です。逆に、それが明確であれば、足りないところもはっきりするので、スキルを 伸ばす方向性も目標もはっきりするわけです。
だから、自分の胸に手をあてて考えましょう、ということになります。
お客様は、開発成果の引継ぐ先の事業場なのか、それとも、エンドユーザなのか、それとも 組織の上司なのか。
ヒアリングなどで責められるときは、そのときどきによってコロコロ視点が変わるので、 なかなかツライ。 しかし、よく考えてみればどちらにしても要求は共通で、空のように広く海のように深いのです。
「いいものが出来たらもっておいで。」
「いいもの、って、言われても、基準を明確にしてくれないと..」
「そんなん、わかるやろ。簡単に作れて性能は抜群でコストが低ければそれでいいんや。あ、あと、 品質問題は問題外やな。」
真のWin-Win関係を築くには、相当なコミュニケーション能力と実施能力、タフな精神と健康な体が必要だ、 と痛感しています。

(2)こんなに厳しい

世の中だから 仕事の悩みについて相談を受けることもあります。的を得ているかどうか、少しでも 役にたっているのかどうか、はなはだ怪しいのですが、なるべく丁寧にアドバイスするように 心がけています。
「あのー、パパーノさん、相談があるのですが。」
「知らん、わからん、聞いてない。」
「そんないきなり拒否しないでください。えーと、クリーンルームにある洗浄機ですが、管理されているのはパパーノさんですよね。」
「違う、俺は何も管理してない。管理なんて面倒だ。その機械のことならメーカに問い合わせてくれ。 この何年もずっと放置されていたから、動くかどうかもわからんぞ。 だいたい、ものの価値のわからんヤツばかりだから、 いかんのだ。あーもったいない、もったいない。じゃ、な。」
「・・・」
このように、どこへ行っても矛盾だらけの世の中です。人間が関わっていることで 矛盾がないことはありえません。しかも、状況はどんどん変化しています。 目的とビジョンをしっかりと持って、変化や矛盾に柔軟に対応しながら、実現に向かって、 やるべきことをやることが大事だと 思います。

(3)この間、

デルファイ破綻、という衝撃的なニュースが流れていました。(参考記事) デルファイといっても、某ボーランドの開発言語の名称では なく、電子部品のメーカでエアバッグ用のセンサなどを作っている会社です。
まさか、破綻するとは。
どうも米国の自動車メーカGMの経営の具合が悪いらしく、すばるの富士重工もGMグループから抜けて、 トヨタが資本をいれたりして いますが、この調子だとかなりヤバイ。(注1
お客様を絞って対応することも大事ですが、そのお客様が傾くと一緒に沈没となりかねません。
あ〜、そうなんだよなぁ。身にしみる。
元気なのはAppleです。この間のショーはウイントン・マルサリスなんかも呼んでかなり派手に やったようですが(参考資料)、次のipodは動画再生もできる、ということで、さすがですね、 これで、さらにipodブームが燃え広がるのではないでしょうか。
TV局とも契約して、コンテンツをダウンロードできるようにするなど、あいかわらず、 旺盛なビジネスをしています。
Appleはスティーブジョブスが復帰してから、ほんとに勢いがあります。 自分が好きなものを実現することが商売になるのなら、これほどいいことはありません。 自分をお客様と考えて、自分が楽しいものを妥協することなく作れば売れる。いいなぁ。
しかし、その陰で、必死に製品開発をしている人達がいることに思いをはせて欲しい。 そういう意味では、今回紹介したMP3プレーヤのキットは是非試して欲しいものです。1万円ほどで、SDカードが つかないので、決して安くはありませんが。(手作りで「ipod」に挑戦−Hot Wired Japanの記事)

(4)キットといえば

中学・高校のころ、毎週のように秋葉原でうろうろしていたことを思い出します。学校が渋谷の近くにあったもので、 渋谷の藤商電子に寄ってから、渋谷から銀座線で秋葉原まで出て、 今は亡き亜土電子工業、若松通商、そして、あの秋月電子
藤商は、もう店じまいしているらしく、樫木総業(株)が 引き継いでいるようです。テナントビルの小さい店に所狭しと電子部品がおかれていて、 真新しいエポキシ樹脂のプリント基板や電解コンデンサやICの匂い、セラミックパッケージの軍用規格の7404、 5〜6人の社員の方が、事務机で仕事をしているのですが、 みなさんクールな顔と態度で、ああ、なんだか懐かしくなってきました。
秋月はそのころから小さい店の前に人だかりで、特価品のICを漁ったものです。当時最先端だった、16kビットDRAM (メガでもギガでもない、キロですからね。) の富士通のもの(MB8116)が特価1000円だかで出ていて、思わず8個(そのころは8bitCPUだったのです。)買ってきました。 結局使わずじまいだったのですが。
キットもいいものがたくさんあって、特に、マイクロチップのPICや、日立のSHマイコン、Z-80を使った ワンボードマイコンはクロスコンパイラもあるし、素晴らしいものです。ちょっとした制御用ボードとして 使いでがあります。秋月のホームページには 「小ロット生産者と共に歩む」と書いてありますが、これはお客様を絞って、そこに徹底してサービスする という姿勢がよく現れています。実際、日本の産業は小ロットでいろんな機器の製作をフレキシブルに行う 中小企業に負うところが大きいことを忘れてはいけません。
そういえば、若松通商もMP3プレイヤーの自作キットを販売しているようです(参考資料)。

(5)さて、9月から

事業場でオンサイトで開発を進めることになったわけですが、 テーマの数は変わらず、人員が変わったわけでもないし、集結したからといて技術課題が 自然に解決するわけでもないので、集結したからには成果を出すぞ、というヤル気が かえって問題の本質を見えなくしている可能性もあります。
本来は事業場の技術者と研究所の技術者が同じ場所で開発を進めることで、お互いに 足りないところを補いあい、シナジー効果で開発が加速するはず、なのですが。
事業場のメンバーも、それぞれ抱えている開発業務や、次から次へと現れる課題の解決に 振り回され、まったく集中できていません。そして次から次へと緊急事態が発生し、 八方美人の私が、周囲の人のすべてがお客様だとばかりに、 実施能力の不足をシャカリキになって補おうとすると、 とんでもない仕事量になってしまい、家に帰るのが連日12時を越え、休みも返上で仕事する始末です。この間の3連休 も毎日会社へ行き、何台かのシミュレータを皿回しのように回していました。さらに 緊急事態が毎日のように発生し、夜を徹して仕事をするのも先々週1回先週2回今週1回。13日に 夜を徹して会社で過ごした際には、サッポロの黒ラベルを2本買ってきて飲みながら 仕事をしていました。
そんな私に引っ張られるメンバーも大変だと思うのですが。頭がさがります。そこで声をかけてみました。
「いやぁ、いつも前向きな君には感謝しているよ。ありがとう。」
「いえいえ、どうせ倒れるなら前向きのほうがいいですから。」
「ははははは。なるほど、後ろ向きに倒れたら後頭部を打つからなぁ。」
それでも先週の土、日は、小雨がパラツク中、テニスの壁打ちはちゃんと続けて行っています。
まだまだ、これから。とりあえず、マイペース。
雨あがりの10月の朝の空をどうぞ。

季節の変わり目です。お体を大切に。


そんなこんなでサバイバルの毎日が続いているのですが、そんな中、 ついに千葉ロッテマリーンズが31年ぶりに優勝しました。
やっぱりやってくれました、ボビー・バレンタイン監督。華がある、というかなんというか、 野球を楽しもうという雰囲気が満点で、ボビーがいるだけでなんとかなりそうな気がするから 素敵です。あんなマネージャーになれたらなぁ。

また、本がいっぱい出るに違いない

勝てば勝ったで、経営手法を、ほめそやし、祭りあげ、負け始めればすぐにこき下ろし、 同じ手法のすべてが悪いように書き立てられ、まぁ、ビジネス雑誌もスポーツ新聞も、 女性週刊誌も対象が違うだけで構造は似ているような気がします。
自分の軸をしっかりと、自分の頭で考えることが大事です。
おっと話がそれましたが。
祝ロッテ優勝!次は日本一だ!


4コママンガ<ハムとラン> とキャラのページ
(c)Shimamura,T
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注1)

これを書いているうちにもフォードも第3クオーターの決算が2億8400万ドルの赤字だという新聞記事を見ました。本拠地北米での 販売が振るわないらしく、軽くやばい。(参考記事)