2008年も第一クオーターが終わりました。
4月になれば、大きく環境が変わる人がかなりいるわけで、学生さんであれば進級、進学、そして就職など、
短い間にいろいろな節目をこの4月に迎えることになります。
でも、開発業務の進捗は季節や節目と本来は関係ないはずなので、たまにヒアリングの場で突っ込まれることもあります。
「なんで、君の計画はいつも3月や9月みたいなキリのいいときに終わることになっているのかね?」
「だって、毎年、期ごとに大きく組織変更するじゃないですか。」
まぁ、多くの場合、お客さんのほうもクオーターや期といった節目に合わせて事業の計画をたてるので、
開発サイドもそうなることが多いのではないかと思います。
場合によっては、具体的な開発内容とそれぞれのタスクにかかるリソースや期間の推定が、まったく出来ていないから、
とりあえず、節目に合わせて目標としておこう、というのが、本音だったりして。
4月というのは、北半球の、とくに日本の本州の、しかも太平洋側では、寒い冬が終わってちょうど桜が見事に咲き、
気候も比較的安定でコートを脱いで歩くようになる、季節感としては節目としてふさわしい気がします。
ここ京都では、桜がたくさん植えてあって個人の住宅の庭にもよくみかけます。昨日、ランちゃんを連れて近所を散歩していたら、満開の見事な桜の下
にテーブルと椅子を出してあってバーベキューの準備をしている家を見かけました。
丸山公園や清水寺など名所もたくさんあり、京都はそれほど広くもないので、半日ほど歩くとほんとに桜を堪能できます。花見に来られたかたも多いかと思います。ちょうど満開で、天気もよくてなかなかいい週末でした。
「私たち二人って、運がいいよね。こんなに天気がいいなんて。」
私たちだけ運がいいと思っている人は、一緒におしかけた数万人もいるわけなのですが。
京都新聞の6日づけの記事によれば、伏見の醍醐寺には5日だけで1万人の人が訪れたということです。
テレビの番組が変わる、ラジオ番組が変わる、というのが変化として感じられるかもしれません。中学に入って
NHKラジオの基礎英語なんかをはじめ、結局挫折した思い出を持っている人も多いのでは?
私がこの2年間ずっと取り組んできた「ビジネス英会話」も3月で終了、新しく「実践ビジネス英語」となって
スタートしました。物語の登場人物やストーリーは新たになったものの、構成はほとんど同じで、おなじみの杉田敏先生と
クリス松下さんの真摯で実直な姿勢が伝わってくるすばらしい番組です。これまで11時15分からだったのが、10時35分から、とちょっと早くなったのですが、最近、早めに帰宅するように仕事をしているので、逆に都合がよくなりました。
今回のタイトルのsea changeという熟語は、ビジネス英会話の最後のレッスンで出てきた熟語です。主人公の
高橋修三が米国のブライトウエル・ファームズで働いたこの4年間を振り返り、インターネット、電子メールといった新しい技術によって生活様式が大きく変わってきていて、産業革命や車輪やアルファベットの発明と同じくらいの
変化がもたらされた、という内容の会話が同僚との間でされています。
高橋修三は日本法人へ転勤になるそうです。
研究所内ですが、所属するチームが変わります。
私の技術者としての軸は、薄膜、単結晶、圧電、フィルターといった
キーワードでくくれるのですが、今度のチームは「セラミクス積層」というキーワードになり、
不案内な分野に転身することになります。フィルターというキーワードは変わらないので、これを軸として磨いていくなかで、新しい分野で技術の幅を広げていきたいと考えています。
さらにセンター長も変わり、所長も変わり、上位マネジメント層は総入れ替えです。これまで私のことをよく知って使ってくれた人がいなくなりました。ただ、新たに信用を築くチャンスでもあります。また、4年前から一緒に仕事をしてくれていた二人の派遣の方も、この3月で契約を終えることになりました。
数年ごとにどんどん担当を替えていく日本のやり方を見て、一緒に仕事をしているドイツのエンジニアが言いました。
「お前、チャンピオンマネジメントって知っているか?」
「強みを活かして徹底的に育てることでチャンピオンを作るマネジメントのことか?」
「違う違う、チャンピオンってマッシュルームのことさ。」
「マッシュルームマネジメント?」
「つまり、だな。マッシュルームって、屋内の棚に菌を植えつけてさ、成長したらカット、成長したらカットってするだろう?そういうマネジメントのことさ。」
是非はともかく、Sea change(注1)、つまり大きな変化が、個人の周りでもビジネス環境においても
起こっていて、これは避けられない。止めることもできない。自分から変わっていくか、それともカットされてしまうのか。
今、インテルの創始者で元CEOのアンドリュー・グローブの書いた"Only Paranoid Survive"を読んでいますが、インテルが
メモリビジネスから撤退しプロセッサに特化していく決断をくだすことになる、ゴードン・ムーアとの会話が印象的です。インテルは、1968年に64bitの半導体メモリから始まり、翌年に投入した1kbitの1103で市場を握ったメモリの草分けでメモリといえばインテルというほどだったのですが、1980年代の半ばに、後発の日本メーカにテクノロジー、歩留まり、そして価格で完全に負けて収益が悪化していたのです。
「もし、我々が辞めさせられて新しいCEOにかわったとしたら、新しいCEOは何をすると思う?」
するとゴードンは躊躇なく答えた。
「メモリを止めさせるだろう。」
私は彼を見つめて言った。
「なぜ、私たちは、一旦この部屋から出て、それからまた戻って来て、我々自身でそれをしないんだい?」
この間、東京に行ってしまった大学時代の友人と久々に会いました。ベルギービールを中心にたくさんの種類のビールが置いてある"Favori"という店です。昔と変わらないたわいもない話をしながら、お互いにあまり変わっていないことが
なんとなく嬉しい気がしました。
周囲の変化に合わせて自分を変えることは簡単です。
ちょっと外へ出て戻ってくればいい
でも、立場が変わってものの言い方が変わったり、仕事の仕方やポリシーや生活のスタイルを大きく変えていっても、 別人になってしまうわけではないのです。
4コママンガ<ハムとラン> とキャラのページ (c)Shimamura,T |
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hardy@max.hi-ho.ne.jp |
Sea change
World Wide WordsのQ&Aを見ると、
シェークスピアのThe Tempestに出てくる詩が起源だとあります。「大きな変化」、「大転換」という
意味ですね。ところで、このサイトでDrunkorexiaという単語がNew And Updatedにあるのが目を引きました。
食事を制限することで、好きなだけ酒を飲んでも太らないようにしている若い人のことだそうです。
むむむ、それって私のことか。
Traversing the Valley of Death
ただ、いかにインテルとはいえ、メモリを止めてプロセッサに集中するというのは、簡単ではなかったようです。
メモリビジネスの急激な変化のような大きな変化のことをa strategic inflection pointと名づけていますが、
この状況を乗り切ることを、グローブは「死の谷を渡っていくようなものだ」と書いています。
その先に何があるのか、自分がどうなるのか、明確に描くことが大事だということです。たどり着けること、たどり着いた
先に明るい未来が開けることを信じて進むしかない、ということです。