パパーノなんなんでしょう

No.6
2003/4/5

I've had a long streak of that bad luck,
I'm praying' it's gone at last.
(Paul Simon,"Gone at Last")

今回のなんなんでしょうは、
  甲野善紀「古武術に学ぶ身体操法(岩波アクティブ新書63)」(岩波書店, 2003 )
 or 武術稽古研究会 松聲館
です。


生兵法は怪我のもと

(1)不景気が続いているせいか

経営がシビアになってきて、金は出せないけど、儲かる商品を開発してくれ、という要請が強くなっています。 世間一般と違い、我々の部門はこんなときほど忙しい。
 投資がいらなくて、余剰人員で特別な訓練をせずに製造できて、永遠に他社と差別化できる技術を使っていて、 他社特許に抵触せず、材料や製造、アプリケーションまで含めて自社特許で抑えてあり、不良発生率は0%、すぐそこにお客さんが待っていて、市場が大きく、 なおかつ、確実に年率10%以上伸び率が約束されている 、そんな商品を金をかけずに短期間に開発してほしい、って、そんなモンあるわけないよね。 そうは言っても、どの研究開発テーマも、スタートする時には、そんな夢の商品を開発する企画になっています。
 本当ですよ。
 10億円ほどの投資がいるけれど、目論んでいる販売を考えるととるに足りない、製造は現行製品と 少し似たところがないこともないと言えないこともないので問題はない、作ったことがないので他社よりも圧倒的に安く何倍も性能がよいハズで、 特徴がないので他社特許には抵触せず、年度末にノルマで出したアイディア特許で脇を固め、信頼性は試験していないので問題がないハズ、 ユーザの要求にすべてイエスと回答したのでユーザには好評、市場は、われわれに都合のよい情報 だけを総合すると、無限に大きく確実な伸びを示している、っていうわけです。 いや、でもけっしてダマしているわけじゃないのだよ。成功は企画しだい、アイディアが肝心です。

 真実である必要はない。すでに知れわたっている事実と矛盾しなければいいのだ。(レイモンド・チャンドラー「長いお別れ」)

(2)こんなときこそ

発想の転換が必要です。技術者は常に新鮮なアイディアを求められているので、 それぞれ頭をやわらかくする工夫を怠ってはいけません。例えば、私が入社してすぐに配属された部署では、 「漢字テスト」というのをやっていました。同じ読みの漢字を10分くらいの時間内に 思いつく限り書き出し、一番多かった人が勝ちになるという単純なものです。たとえば、テーマが「もう」と読む漢字だと すると、毛、猛、孟、などが正解となります。「申す」とか「詣でる」とか送り仮名があってもよいことになっています。「相撲」の「撲」もOKです。「呻く」..英語でモウン(moan)は、「ん」が余計なのでこれはNG。ウケれば認められる場合も あります。今の例はイマイチだったけど。終わると、脳の中の普段使っていない 部分が働いた気がして心地よい疲労感があります。
 では、今度のテーマは「こう」。制限時間は10分。
 私は34個 で、そのうち1個が間違いだったので33個、平凡な記録に終わりました。みなさんはどうでしたか?(私の答はこのページの最下方に記録しておきました)

(3)体を動かす

のも悪くはありません。できれば、普段と違った動きをしてみましょう。私の今の取り組みは、 「ロボット歩き」です。つまり、右足を出すときは右手を出し、左足を出すときには左手 を出す、という歩き方です。やってみると、なかなかムツカシイ。かなり頭を使わなければいけません。 これで走れるようになれば、マイケル・ジョーダンのようにプレーすることも可能 だということです。3月中ごろに読んだ甲野善紀の「古武術に学ぶ身体操法」(岩波書店 (岩波アクティブ新書63),2003 ) という本に書いてあります。いや、ちょっと曲解してますよ、念のため。もう少し正確に書きましょう。この本で紹介している歩き方(走り方)は、 手を振らずに歩く(走る)、振るとしたら、右手と右足が同時に出るような、歩き方(走り方)です。(前掲書p.118、p.36) 「なんばの歩き」というそうです。私は昔から「ロボット歩き」 と呼んでいるのですが、教養が足りませんでした。いや、しかし、こんな走り方じゃぁ、とても走れたもんじゃありません。 よぅし、走れるようになるまで、がんばるぞ。 なお、「お友達リンク」にもリンクをはっておいたので興味がある人はHPも覗いてください。

(4)成功事例を

紹介しましょう。 プロ野球ジャイアンツの桑田が去年(2002年)に復活しましたが、甲野氏の武術の動きを取り入れたということで、 少し評判になっていました。桑田の新しい「ねじらず、タメを作らない投法」は、従来のピッチング論から考えると非常識な ものでしたが、2002年のシーズンを通して安定した成績で防御率2.22はセリーグの一位でした。フィールディングも前より上手くなったと 本人が言っています。この4月1日も7回を投げて4安打で失点0、108球ですから、たいしたものです。
 ところで、ムチが威力を発揮するためには、一旦、ムチを振り下ろす方向と反対側に勢いよく振らなければいけません。この間に相手のふところに踏み込んで、胸を突けば、指先ひとつで後ろへ倒すことができます。 ただ、普通のスポーツの理論でいうと、勢いよく踏み込むためには、一度体をねじる必要があります。これは、 ムチを振るのと同じようにロスタイムがありますから、そううまくはいきません。 でも、甲野氏の言葉を引用すると、「つっかい棒をはずすように」「重力のエネルギーを利用して」、倒れこむように ということでしょうか、初動でねじることなく動ければ可能になる、そしてどうやらそれが可能らしいのです。

(5)頭がやわらかくないと

こういう新しい考え方を取り入れることは難しそうです。他にも、東京の桐朋高校のバスケットボールチームは成功した 例ですが、従来の運動を捨てて、武術の動きを取り入れ、組み替えてモノにするまでには相当、 悩みもし苦労したようです。桐朋高校の 成功を見て、他の高校も武術の動きを取り入れようとしたらしいのですが、失敗するところも多いようです。失敗する例として
「先生(指導者)自身がやらないで生徒に「やれ」というもの」
「古武術をやればすぐ強くなると思っているチーム」
「技を手に入れるまでの熟成期間にあきらめてしまうパターン」
が挙げられるそうです。(前掲書、p.35)
うう、われらの研究所も耳が痛い。


私は予言する。

そのうち研究所でロボット歩きが流行する

ってね。 ただ、1ヶ月近く、ロボット歩きを試していて、最近、腰のあたりに筋肉痛を感じます。 しかも、うっかりすると、どっちの手を前に出すのか、頭が混乱しそうになります。そのせいか、 長時間歩いていると、少々、気持ち悪くなるときもあります。生兵法は怪我の元。やめよっかな。


4コママンガ<ハムとラン> とキャラのページ
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パパーノの答
高、項、講、構、購、校、公、香、工、交、行、肛、口、腔、酵、皇、考、孝、後、光、幸、耕、巧、 降、更、向、孔、 綱(綱領)、江(揚子江)、黄(黄河)、紅(紅海)、河(河本さん=こうもとさん)、 凍(凍る)
、で33個でした。間違いの1個: 手へんに耕という新しい漢字を作ってしまった。あったような気がするのですが。
甲、候、功、鋼、効、港、硬、航、など、初等的なものがまだまだあります。 なお、 請う、乞う、などは不可。
トンチのきいた面白い答えがあれば、教えてください。