パパーノなんなんでしょう

No.40
2004/ 4/28

And after it rains, there's a rainbow
and all of the colors are black
It's not that the colors aren't there
It's just imagination they lack
Everything's the same black in my little town.
(Paul Simon, "My Little Town")

今回のなんなんでしょうは、
Joni Mitchell .com
です。


サマータイム

(1)私がジャズボーカルの

素晴らしさを知ったのは、ヘレン・メリルがギル・エヴァンズ・オーケストラを バックに歌った「サマータイム」でした。この曲は、米国のガーシュイン作曲で、「ポーギー とベス」というミュージカルの中で歌われます。 この作曲家はアメリカのジャズやブルースなどのフィーリングを持ち込んだ作曲 スタイルで有名ですが、逆にガーシュインの曲は、ジャズで取り上げられることが 多いのです。中でも、サマータイムはたくさんのプレーヤーが演奏する名曲です。 私は、このヘレンメリルで始めて聞いた、その印象が強烈だったので、 このレコーディングがサマータイムの究極だ、と信じ込んでしまっているのですが、 このコラムを読んでいる人は、是非、入手して聴いてください。絶対おすすめ大丈夫。
ギル・エヴァンズ(注1)はアレンジャーでありジャズオーケストラの指揮者としても有名ですが、 マイルス・デイヴィスとの数々の名演があるにもかかわらず、このヘレンメリルの レコーディングの時代まで、ずっと不遇の日々だったらしいです。多分、ベースのヒーロー ・ジャコ・パストリアス(注2)がギルのオーケストラに参加したことがあって、 広く知られるようになったのではないかと思います。

(2)指揮者、というと

このコラムの大方の読者は、「きっと、ここからマネジメントの話が続くのだろうなぁ、 まったく、説教っぽい話が好きなんだから」と予想してしまうでしょう。
今回は期待に沿えません。
それよりも、みなさんは「夏の日」というと、どんなイメージを思い浮かべますか?
私は小学校の低学年のころの夏休みのころをたまに思い出します。私は、川崎市、 神奈川県の端のほうに生まれ育ったのですが、両親ともに、東京近辺の出身なので、 長い夏休みもずっと都心の自宅にいたのです。友達はおじいちゃんやおばあちゃんの家 、田舎、へ帰ってしまい、遊び相手もあまりいません。
それでも、東京の近郊は丘陵地帯になっていて意外に緑が多く、 畑や田んぼ、雑木林も結構あります。自転車であちこち出かけて、セミとりや クワガタとり、カナブンとりなど、よく遊んだものです。
イチジクの実の中や、 腐った木の中にはたいていコクワガタがいて、ほかによく捕まえたのはハナムグリという 小柄で少しにぶい銅色にシミのような白い斑点の入った冴えない色のコガネムシです。カミキリムシもイチジクの木には よくいました。ゴマダラカミキリというのが多く、たまに、星の色が真っ白で黒いつややかなのが 捕まえるとうれしかったのを覚えています。 いや、そういうのだけが、本物のゴマダラカミキリで、 星の色が黄色っぽく薄い色の冴えないヤツは キボシカミキリというのです。
セミはアブラゼミばっかりで、 なんで自分のまわりには、こんな冴えない色、冴えないカッコの虫しかいないのだろう 、と腹ただしく思ったものです。羽の透き通ったきれいなセミというと、ミンミンゼミと ツクツクホーシくらいで、ヒグラシとかクマゼミ、エゾゼミなどにはあこがれていました。 ミンミンゼミは数が少なかったので、たまに捕まえるとすごく嬉しかったものです。 ツクツクホーシの鳴き声が聞こえ始めると長く感じた夏休みも終わりです。
何者かになろうと思いがあったわけでなく、何か得意だったわけでもなく、 ただ、むやみと長かった夏休みをどう過ごしたのか断片的にしか覚えていません。
ギラギラ輝く太陽の下で、アゴからしたたり落ちたアセがポタッと一滴落ち、 くずれたコンクリートのかけらに黒いシミを作ったのを良く覚えています。

(3)今回のドイツ出張では

空港を出る時間が、前回と比較して1時間早くなっているのは、どうも変だ と思っていました。1回目の昼食のあと、たっぷり飲んでから しばらく寝て起きてから、8時間の時差で時計を合わせました。 でも、どう計算しても、到着時刻が1時間はやくなりそうな気がします。 そりゃ、1時間早く出れば1時間早く着きますよね?で、 しばらく、前方の液晶テレビを見てみると、現地時刻が 表示されていて、なんと、合わせたはずの時計が1時間遅れている ではありませんか。おれは飲みすぎで酔っ払っているから頭がおかしくなった んじゃないか、と疑ってみたのですが、
わかったよ、PCの時計の設定を見てみたら、ちゃんと、夏時間を自動的に 設定する、のチェックボックスがあるしね、要するに、 今、ヨーロッパでは夏時間−サマータイムなんですね。それで、すべて1時間早かったのだよ。
サマータイムといっても、特別にどこにも、「現在はサマータイムで運行しています」と 書いてあるわけでもないし、気がつかない人は気がつかないでしょうね。
今回、同行したS君にも、フランクフルトで降りてから、サマータイムに 気がついたか、と訊いてみたのですが、 やはり気がついていませんでした。

(4)ホテルの部屋で

まず、時計をチェックしたところ、なんと、1時間ずれています。 この時計は1時間シフトしわすれているようです。フロントに時刻を確認してから文句を 言っておきました。なにしろ、数年前にS君と福岡に出張したとき、 ホテルの時計がずれていることに気がつかず、朝の待ち合わせに 1時間も遅刻した前科がありますから、今回は慎重です。
あのときは彼はちゃんと時計がずれていることに気がついていて、 そんなところに人間の出来の差が現れてしまうのが悲しいところです。
前回のミュンヘン出張は、現地で同行者と落ち合ったとはいえ、ほとんど孤立無援状態でしたが、 今回は、何年も一緒に仕事をしている戦友のS君という心強い味方がいるので、 まったくもってお気楽出張です。 最終日は、5時ちょうどに、仕事が片付いたので、マリエンプラッツ近辺を二人で うろうろしました。サマータイムのおかげで7時になってもまだまだ日が高いので 、結構楽しめました。
S君は、やはり私よりよくデキてきる人なので、カメラを持ってきていました。 マリエン広場の新市庁舎、いろいろ買い食いした ヴィクトアーリエンマルクトバイエルン州立歌劇場など、貴重な写真をとってくれました。
買い食いやビールの話はまた次のこのコラムで書きますのでお楽しみに。
でも、8時になると、日が暮れてきて屋台や小売店、デパートなど、ほとんどの店が 店じまいです。サービス産業が1年中同じ時間で運用してくれれば、 サラリーマンにとっては、アフターファイブが1時間伸びるのだから、 具合がいいのですが、国全体の標準時間がシフトしているわけですから、 しょうがないです。

(5)行きの飛行機の中で、

となりの兄ちゃんがうるさくてよく眠れませんでした。女性二人を連れたツアコン ですが、離陸前からブランド品のカタログのコピーを見せながら、
「これは、○です。これは、えーと、△です、で、これは◎ですから、店にはいったらまず、 店員さんに、サイフを見せてくれといって、それから、・・・」
などなど、いろいろ教えています。多分、輸入業者なのですね。それも、かなり怪しい。 多分、現地のルイヴィトンにしかない、レアなバッグや小物を買い付けて、日本で売り捌く 商売なのでしょう。当然、正規のルートではないし、きっと、何べんも顔を出して顔が割れる とまずいから、女性を連れて行って、買わせるのでしょう。
参考資料1参考資料2 参考資料3
3人だけだから、そんなに大量に買い付けることもできないだろうし、それで女性二人を連れて、 きっと、ホテル代やら飛行機代やら出しているだろうし、いったい、 日本で、どんな値段で売れるのでしょうか。買う人は買う、持っている人は とことん持っているのだな、それにしても変な商売があったもんだ、と 少々、ウルサイので腹を立てながら考えていました。
「これからさぁ、11時間ほど飛行機のなかだからぁ、よく見て、覚えてねー。」
なんて言っているから静かになるかと思ったら、アルコールが少し入ったら、 ますます声が大きく、ほんとにしょうもない話ばかりしています。 あんまり腹がたったので、静かにしろ、と言ったら 少しおさまったけどね。


ランチの時にドクターに「いつからサマータイムのシーズンが始まるんだ?(英語)」 と訊いてみたら、「なんだ、コイツわけのわからないことを言うなぁ、困った人だ」 というような表情で首かしげて笑いながら、「夏の季節をお前はどう定義するのか、 それによるじゃないか(英語)」と言われました。
なんか話がかみあわなかったので、少しピンときたところがあって、 「今のシーズンは1時間、時間を早くしているだろう、そのことを、 君たちは、どう呼んでいるんだ?(英語)」 と聞いたら、

daytime saving

っていうんだって。勉強になりました。
今回は少しみなさんの期待よりも長く更新が滞ったように思います。
ビールと食べ物の話は次にします。また、どうぞごひいきに。


4コママンガ<ハムとラン> とキャラのページ
(c)Shimamura,T
トップページ  パパーノ Index  メール  hardy@max.hi-ho.ne.jp

注1)ジャズオーケストラのアレンジ

について、私はそれほど詳しいわけではないのですが、ギル・エヴァンズの創り出す 音の響きは本当に不思議な気がします。構成する楽器が、ちょっと普通のバンドと 違っていることと、ハイテンションな美しい不協和音を多用すること、 が特徴的です。
それから、緻密なアレンジと相反するようですが、各プレーヤの 自由度を非常に高くしていることも特徴的です。ソロはやりたい奴が立ち上がって やったらいい、バックもやりたいようにやったって構わない、という姿勢が なんとなく聴こえるのです。

注2)ジャコ・パストリアスは

ベースのスーパーヒーロー ですが、暴れん坊としても有名です。それまでのベースプレーヤーは 縁の下の力持ち、という印象だったのですが、過激なソロプレイ、創造的な 伴奏、そしてフレットレスのエレクリックベースと軽くかかったディストーション で創り出す甘くラウドな音色で一世を風靡しました。彼の参加した作品では、 パット・メセニーのアルバムですが「ブライト・サイズ・ライフ」が私は好きです。 ジョニ・ミッチェルの"Hejira", "Shadows and light (Live)", "Mingus"も素晴らしいです。 「ジャコ・パストリアス」と自分の名前がアルバムのタイトルになっているファーストアルバム も好きですし、後年、彼は「Word of Mouth」というビッグバンドを作り、好評でした。 スチールドラムやハーモニカなど、やはり珍しい楽器を使った編成で、 素晴らしい演奏を聞かせました。でも、そのころから精神は変調をきたしていた ようで、数々の奇行でも知られるようになりました。
ジャコは「ウエザー・リポート」というフュージョンバンドのベースとして 抜擢されて一躍有名になりました。 「ブラックマーケット」も素晴らしいし、でも、特に素晴らしいのは「8:30」 というライブ盤です。ジャコの創造的なベースラインを堪能できます。
天才ともてはやされたのですが、しかし、実際には、ウェザーリポートの リーダー、キーボードのジョー・ザビヌルが書いたラインだったそうで、 ジャコが発明したものでも、天才的なひらめきによってアドリブされたものでも なかったらしいのです。
自分の才能に飽き足らなかった天才は、決して手に入らないものを 手に入れようとして、狂ってしまったのではないか、なんて、勝手に考えています。 アル中でボロボロになり、最後は酔っ払ってバーで喧嘩して殴り殺される、 ドラマティックな人生を疾走した素晴らしいベーシストでした。
死後にたくさんのアルバムが発売されました。Amazonで調べればたくさんひっかかることでしょう。是非、聞いてみてください。