横浜にあるユーザへ出向いて、開発の遅れている新製品について、対策と今後の開発プランを
説明しに行った結果、開発計画を抜本的に見直す必要に迫られ、キャッチアップのために、
親会社の研究所の応援を頼むことになりました。一日かけて説明資料を準備し、夕方6時半すぎに、
私が所属する研究所の所長と、2人のチームリーダー、引継ぎ先事業場のチームリーダーと
連れ立って、親会社研究所長の部屋へ行きました。
雑談のような会議が始まった冒頭で、
状況はよくわかっている、みなまで言うな、中途半端なことはしないことに決めた、
明日から一人派遣してやる、てなもんで、
私の作成した資料は手元に置かれたまま一回も開かれることもなくあっさりと
決まりました。終始なごやかな雰囲気で、
昨今の経営環境や、人材育成、人材配置の考え方など、笑いながらの雑談が1時間半ほど続きました。
人を動かすなんて、決定されている現場ってそんなもんなんだなぁ。
世の中って恐ろしい、将棋のコマと一緒だな、と思いながら雑談を聞いていたのです
が、なんのために、殺人的に忙しい研究所長
2人が雑談をしているのでしょう?どうも、やりとりを思い出してみると、雑談のようで雑談でなく、
人事異動の微妙な点についての交渉取引だったような感じです。
「あのクラスの会話ともなると、やっぱり深いですねぇ、Yさん。」
「いや、思いっきり浅いだけかもしれんぞ。」
何が決まったのだろう。何かとんでもないことが決まっていたような気もするのですが...。
2月11日といえば、このホームページを立ち上げた日でもあるのですが、
今年は吉野家が牛丼を一日限定で販売したそうで、
各地で行列ができた
ようです。2005年2月12日の朝日新聞には、
昨年まで週2,3回は牛丼を食べていた経済アナリストの森永卓郎さん(41)の意見が載っていますが、
「牛丼ニーズは消えた、との説があったが、行列が進まずあちこち店を回って食べるまでに
9時間かかった。」
ということで、ヒマなのか、それとも、行列の並び方が下手なのか、それとも
あちこちで一食づつ食べたのか。まぁ、それほど、好きだということなんでしょう(注1)。
それにしても、結論としての
「米国産牛肉の輸入が再開されれば、一気に売り上げは戻ると思う」
は、経済や消費動向、あるいは消費者心理の詳細な分析に基づいたものではなく、
単なる牛丼ファンの意見であって、別に経済アナリスト
としての意見ではないのに、新聞の記事も注意して読まないと、うっかりだまされてしまいそうです。
でも、この一年で「こだわりを捨てずに頑張って耐える吉野家」「中途半端な牛丼は出さない吉野家」
というイメージは定着して、ブランド力
はかえって高まったのではないでしょうか。もっとも、ブランド力の源は、あの値段と、
あの味でしょうから、それまで本業に徹底的にこだわってきたことが体力の源であることは
間違いありません。(注2)。
国内初の変異型クロイツフェルト・ヤコブ病によって男性が死亡した、と
2月4日に発表され、おそらく英国で滞在中に感染したということですが、
牛肉消費がさらに冷え込む恐れがあると、食肉業界の方たちは心配していることでしょう。
ただ単に牛肉を食べただけでは感染する恐れはない、といいますが、一方で
事前の検査方法も治療方法もなく、どれだけの量を食べれば感染するのかなど何も
わかってないのが現実だということで、わからないということが不安を増幅する原因の一つでしょう。
もし、英国で感染したのが本当なら、感染から発症するまで12年、死亡まで15年、亡くなって
はじめて病名が確定という点も
恐ろしい。
自殺者が年間3万数千人を数え、交通事故で1万人近く(注3)
亡くなっている世界に住んでいることは
間違いないのですが、こちらは単に慣れてしまっているからか、生きていくうえでの
通常のリスクとして理解されてしまっているからか、はたまた、便利さの代償として、
社会が払うコストとして考えられているからなのでしょうか。そう思うと、
今回の発表によって
牛肉の販売が落ちてつぶれてしまう焼肉店があったとしたら、それはそれで理不尽です。(注4)
一寸先は闇、何が突然自分の身に降りかかるか、わからないものです。
(No.11 一寸先は闇)
しんしんと冷え込み、雪こそ降らなかったものの、毎年恒例の吉田神社の節分祭は 雰囲気はたっぷりでした。 神戸牛のステーキの屋台もあれば、焼き鳥、他にマグロのステーキもありました。 今年はミュンヘンであちこちに見かけたドネルケバブの店も3店ほどみかけ、 ブレークしそうな予感です。ごった返す人並みにもまれ、賽銭を投げ入れ、手を合わせてから、 またあっという間に一年が過ぎていく予感を胸に、 七輪で焼いたいわしをかじりながら、恒例の富士千歳の濁り酒を飲み、 節分祭を楽しみました。
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正月より人が多いのです。 屋台の数も多いです。 |
これが濁り酒。 ひしゃくですくって入れてくれます |
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これがドネルケバブ ドネルというのは回すという意味だそうです。 削いだ肉を野菜と一緒にパンに挟んで食べます。 |
ベーコンエッグタイヤキ。美味しいですよ。 |
親会社研究所から派遣されてくる技術者にとっては寝耳に水、明日のわが身はわからない、
というのはこのことで、少し同情してしまいます。
間が悪いことに、私のチームでは、その前日に長期療養中だったメンバーの復帰祝いで、
緊急事態だというのに飲みに行ったばかりだったのです。
「ということで、C研究所のN君が来ることになったので、協力して仕事を進めて欲しい。」
みんな、なんとなく憮然とした顔をしています。援軍は嬉しいものの、自分たちの力でなんとか
乗り切ろう、と一体感が出ているところで、本社の研究所から人が来るっていったって、ほんとに
俺たちと思いを共有してやってくれるのかな、中途半端に
参加してくれても、やることが増えるだけでいい事ないよな、って気持ちもわからんでもありません。
(あくまで想像です。単に私のマネジメントが嫌いなだけ、私の性格が気に食わない、
あるいはミーティングが嫌いなだけ、など他にも理由は考えられます。)
「何か質問は?」
「あのぅ、歓迎会はするんですか?」
「いい質問だ。・・・この2週間のうちにしたい人は?」
し....ん。
緊急だ緊急だ、と発破かけられて、キリキリ舞しているメンバーの当然の反応でしょう。
「3月に成果が見えたらしましょうよ。」
この意見はしごくもっとも。あぁ、N君には同情するよ。
ただね、私もつらいので、いや、そうじゃなくて、これが失敗すると事業が一つなくなるかもしれないのでね、
中途半端はよして頑張ろうぜ。
いつか読んだ本に、これから求められる人材像として、休日は100%楽しむ、例えばゴルフならゴルフを 、釣りなら釣りを100%楽しむ、が、例えば順番待ちなどの何もしていない一瞬に 、スパっと切り替えて仕事のことを100%考えることができる人間、 という ことが書いてあったのですが、まぁ、ムリでしょう。そもそも、それで100%なんて矛盾してますよね。
仕事も、家庭も、恋も、すべて100%
と言っている某TLもいますが、
矛盾していても、物議をかもしても、やると決めたら徹底してやる、ということが大事だと思います。
4コママンガ<ハムとラン> とキャラのページ (c)Shimamura,T |
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hardy@max.hi-ho.ne.jp |
注1)本人としては
9時間も並ぶくらい牛丼ニーズは健在なのだ、と言いたいんでしょうけどね。
この記事の横は「行列でもけがでも欲しい」という記事が大きく載っています。
堺の吉野家で11時の開店前に
車が店に突っ込んだらしく、7人がケガをしたそうですが、青いシートで覆って営業を再開、
治療を終えた人も再度店に現れ、牛丼を買っていったそうです
(Asahi.comの記事)。
そんな二人の客を紹介していますが、一人は開店40分前から並んでいた76歳の方で、
「孫ら家族4人分の牛丼を買って帰ろうと楽しみにしていた」そうで、もう一人は、
朝食を抜いて並んでいた68歳の方で「妻の分と2人分を買って帰った」そうで、
家族の方にはいいみやげ話と珍しい牛丼で、さぞ喜ばれたことでしょう。
明石では「牛丼を出せ」と
店員に暴行する事件がおきた
そうですが、酒に酔っていたということで、まぁ、実際にそれだけ牛丼が好きな人なのか
どうか、わからないところがミソで、単にむしゃくしゃしていた日頃のウップンが
些細なことで爆発することもありますからね。
今回かてどっかに在庫があったから、限定で販売できたんやろ、
ほんまにもうないのか、まだ、どこかに隠してるんちゃうん、なんでや、他のヤツら食べて
ワシだけ食べ損ねた、ワシも同じく牛丼を愛してるねんど、ちょこっと来るのが遅かった
だけやんか、ほんまに在庫がゼロやったらまだ、あきらめもつくけどな、
あぁ運が悪かったですね、じゃすまへんわ、ほんまにほんまにニッポン中探して
在庫がカラッケツなのか、証明してみぃ、おぉ、なんかいうてみぃ、こらぁ。
わからんでもないなと思うけれど、子供じゃないんだから、冷静に冷静に。
どうも、米国産牛肉の輸入再開を望む米国の意向を反映して、こんなにみんな
牛丼の復活を求めているのだ、という雰囲気を作るように巧妙に報道記事を作っている
ように思うのは穿った見方だけど、本当かもね。
注2)できそうでできない
というのが、自分の家で細切れ肉などで作ってみて
わかりました。
どうしても、ジャガイモの入っていない肉ジャガがご飯にかかっている、という感じになってしまう
のです。あの肉以外はそれほど珍しい材料を使っているわけでもないでしょうに。
吉野家はある意味ほっとしているでしょうね。代替メニューの人気が牛丼ほどでなくて。ころあいが
難しかったのではないでしょうか。牛丼より決して人気がでないように、
でも、会社が潰れるほどの不人気にならない
程度に、そして、短期間で開発しなければならなかったので、見事だと思います。
ブランド戦略という観点でいろいろ考えてみると、さすがにしたたかな会社であることに気づきます。
今現在の業績は苦しいでしょうが、ここを耐え抜けば、また大きく成長する、と
私は予想します。
復活すると、ビジネス書がたくさん出ることだろうな、きっと、今頃、
タイミングよく出版できるように資料を集めて書いている人もいることだろうなぁ。
もう一つの予想。まだ、在庫をどこかに持っていると思いますよ。ヤマカンですが多分50万食程度かな。
注3)2004年は
7358人(前年比-4.5%)で48年ぶりに7500人を割ったそうです。
(参考)
注4)車メーカも
何もしていないわけではなく、できるだけの安全策をとって、
法律も十分に整えて、そのうえでの事故は、使う側の問題だ、という
意見もあることでしょう。事故の原因が、厳しい安全基準や法律を守らないことによるメーカー
にある場合、社会的に糾弾され、厳しい処分がされている、というのも
本当です。
私自身も、車を運転するし、飛行機にも乗るし、世の中矛盾だらけだ、と言いながらそのシステムを
享受しながら生きていて、だから文明なんていらない、というつもりはありません。
どうしたら、もっとよい世の中になるのでしょうか?