昼食は弁当にしているので、照明を消された暗いオフィスで一人もくもくと
食べることが多いのですが、仕事の時間の融通がつけやすい、食堂で並ぶ
時間が節約できるなど、よいことが多いです。しかも、研究所長と
同じテーブルになって気をつかって会話をするはめになる、という危険は
ありえませんから、精神衛生上具合がよいのです。
一般社員にとって、昼食および昼休みくらい、同期の気のあった仲間と一緒に、
気のおけない話をして、毎日のストレスや不満を忘れたい、そんな貴重な時間でしょう。
海外では、自分の意見を伝えたり、説得するための
機会として、有力者と一緒にランチをとることをパワーランチといい、
いかに適切にその機会を得て、その数少ないチャンスをものにするか、
それが、デキるビジネスマンでデキないビジネスマンの差のように
言われているようです。
逆のケースもあります。
「うん、君の顔は、なかなか怪しい貫禄がついてきたじゃないか。」
「はぁ。おそれいります。」
「うん、そうだな、立派な中国人バイヤーに見えるし、
そうだ、今度中国の研究所を作るから、そこに赴任してもらおうか。」
「え、いえ、いえ、海外なら、Nさんのほうが、しょっちゅう行っているし、
英語も堪能だし、中国語もできないことはないと言っていましたから、
あの方のほうが適当だと...。」
「君はなんで、いつも、そんなふうに人にふって逃げようとするのだね?」
「逃げる、だなんて、そんな。決して。ただ、常に建設的な意見を言おうと
しているだけですよ。はははは。」
「こういう人事は、こんな場のこんな会話で決まってしまうことも
多いのだよ、ふふふふ。」
「ちょっと、事業部長、そんな脅かさないでくださいよ。」
実際、上位マネジメントに行けばそういう世界が繰り広げられていて、
ランチの時間や飲み会の時間さえ、仕事の緊張感で一杯らしいのです。
仕事のことなんて忘れて飲みたいものですが、なかなかそうもいかないのが
実情です。特に、研究所長の送別会なんてことになると、ほとんど
仕事と言ってもいいでしょう。特に、若手社員にとっては、こんなときには、幹事として、
大変な思いをしていることでしょう。ご苦労さまです。
私は、幸いなことに、一度も、そんな目にあわずに済んできました。気がつけば、
偉そうに遅刻して現れ、ふんぞり返ってビールでも飲んでいればいい立場になったので、
嬉しい限りです。
ただし、結構な会費をとられて、スマートな人間に見せるために、ガツガツ食べる
わけにもいかず、とっても損な気分ではあるのですが、
ま、それは仕方ないやね。
私は団体行動が苦手で、なかなか、人の輪にうまく入って会を楽しむこと
ができないので、疲れます。まわりを見渡すと、
やっぱり、最初から最後までずっと仲良しグループで固まっている傾向があります。
ある意味、安心して会話をできれば、仕事としての飲み会の緊張感も薄れる、という自己防衛でも
あるのでしょう。そんな雰囲気だと、ヨソ者は、よけいに、入りにくいですよね。
そんなことを言いながら、「みんなで盛り上がろう!」っていうのも全体主義的で厭ですよね、
なんて思っているから救われません。
若手の中には、それでもがんばって気を使って、あちこちのグループにビールをついでまわる
気丈な方も見かけます。大変ですよねぇ。
やっぱり、一人でなじみのスナックに出かけて
ゆっくりと好きなアイリッシュウイスキーを飲むのが気楽です。
前回のこのコラムで書いたとおり、今度のドイツ出張は、すばらしい私の同僚、
S君が同行です。それに、一回来ていますから要領はわかっているし、
お楽しみもだいたいわかっているので、まったくもって、お気楽出張ですが、
おっと、いやいや、
「プロジェクトマネージャとチームリーダー、つまりはセンターの
主力二人がミュンヘンくんだりまで行くのだから、
今の事業部の苦しい実態を考慮すると、何の成果もなかったら、磔獄門(はりつけごくもん)だぞ」
と出発前日の
昼食のときに、あるチームリーダーから
脅されるほど、厳しい使命を負った困難極まりない
ミッションインポシブルな出張だったのです。
本当ですって。
で、いきなりビールの話をするのもなんなんですが、今回も一日平均2Lは飲んだ、
と思うのですが、ヘレス、デュンケル、ヴァイスビア、と
ほんとうに堪能しました(注1)。ヴァイスビアは飲むたびに好きになります。
少し濁った黄金色で、きめ細かく固い泡がしっかりとたち、
フルーティな香りとすっきりとした味わいでしかも、コクがある、ってうまく表現できないね、
とにかく美味いんですよ。
私の大学時代の旧友がこのホームページを見てくれたらしく、しかも、たまたま
少し前に銀河高原ビールのヴァイチェンを飲んだということで、メールをくれました。「うまいけど、
少し値段が高いのが難点」ということで、確かに、日本でヴァイスビアを飲もうと思うと、
銀河高原ビールくらいしかありませんし、決して味は負けていないと
思うのですが、少々高くつきます。
輸入もののベルギービールやドイツのビールはさらに高いし、そうそう
気軽には飲めません。
ミュンヘン中央駅の向かいにヘルティという大きな百貨店があるのですが、
ここの地下の食料品売り場にはビンビールや缶ビールも売っています。
銀河高原ビールも、アサヒ、キリン、サッポロと
多くの日本のビールと一緒に並んでました。350ccの缶で2ユーロちょっとなので、300円前後
ということは、日本で買う舶来のビールと同じような値段です。
他の国のビールに比べて取り扱っている品種が多く、日本のビールの評価が結構高い
ことがうかがえます。
それにしても、パウラーナーやレーベンブロイなど、地元のビールは0.9ユーロ(約135円)台なので、
だいぶ安いですよね。うらやましい。
ただし、外で飲むと0.5Lのグラス一杯で3ユーロとちょっとですから、まぁ、そこそこの値段です。
でも、日本のように大ジョッキ、中ジョッキ、というようなアバウトではなく、ちゃんと0.3L,
0.5L,1Lというように、定量的でよいと思います。だって、中ジョッキ250円、っていう看板に
ひかれて店に入ったら、すごく小さい中ジョッキだったりして、
しかも、なんだか薄い感じで水で薄めてるんじゃないだろうか、なんてなことはないのです。
は、夜にミュンヘンについて、市の中心部、
新市庁舎のすぐ横にあるドニスルという有名なレストランで夕食を食べました。
ヴァイスビアを
2杯、ヴィナーシュニッチェルは、前回もドニスルのすぐ近くのラーツケラーで食べましたが、
今回のほうが美味しかった。2日目は先方がディナーに
連れてくれたのですが、有名なホーフブロイハウスで、
ヘラス、ヴァイスビア、デュンケルと堪能しました。こちらで食べたのは、今が旬の
ホワイトアスパラガス(注2)、黄色い上品なソースがかかっていたのですが、
あまりにでかい。それから、でっかいボウルのコンソメスープに入っていたレバーの団子
が、直径10cmもありそうなくらいのが、ごろっと一つだけ入っていて、
これもビックリ。
最後の夜は、屋台でピルスナーを1L、ヴァイセスブロイハウスでヴァイスビア、
もう一度市場の屋台でパウラーナのヴァイスビアを飲みました。
焼いたソーセージ(ブラット・ヴルスト)を屋台で買ったり、
デリカテッセンで、モツァレラチーズ、トマト
、ハーブを挟んだサンドイッチを買い食いしながら、
ぶらぶら歩き、外で飲んでいたら、かなり幸せ。
7時くらいでも、外はまだまだ明るいのですが、
どこのレストランも賑やかで、楽団が生演奏で盛り上げます。特に
ヴァイセスブロイハウスでは、吹奏楽団が思いっきり大きな音で演奏していて、
中に入れないほど混雑していました。
外に並べられた木のテーブルに腰掛けると、ウエイトレスがビールを運んでくれて、
その場でお金を払って飲むのです。
となりのテーブルでは若者数人が、ものすごい盛り上がりようです。
その中の一人が振り返って、「お前たちは日本人か?」と訊いてきました。ちょうど、
ミュンヘンで
セミコンが開催されている時だったので、アメリカから来たそうで、
なぜか自分でもわからないが、全然知らない若者たちと一緒にさわいでいるんだ、
と言っていました。
陽気なアメリカ人でした。"Have a good time!"
S君はホーフブロイハウスのディナーで、1プレートで出てくる量に少々驚いていました。最後に
デザートをなにやら頼みました。すると、大きなケーキ皿に山盛り
のデザートが現れ、さらにびっくり。でも彼は「甘いものならいくらでも
入るんだ」といいながらきれいに平らげました。
それはそれで、私はびっくり。彼は私に比べてかなりスマートな体
なのですが、よくそんなに食べれるなぁ。
ひょっとして、彼の頭の切れ味が鋭い秘密は、甘いものにあるのかも。
先方のドクターは体もでかいが、胃袋もでかい。ランチでは付け合せの
ジャガイモを2皿、デザートのアイスクリームを2皿、きれいに平らげていました。
ふむん、やっぱり、甘いもののほうが、頭には良いのかもね(注3)。
ところで、ホテルのバーのバーテンダーは前回は小柄で神経質そうな
しかめっ面の小顔がかわいらしい女性で、それはそれで悪くなかったのですが、今回は、
優しい笑顔が素敵な大人っぽい長い髪の女性だったので、ついつい、
ホテルに帰ってからも、ミーティングをするぞ、と宣言して、フラフラと
バーに寄ってしまい、さらにまたビールを2杯ほど飲んでしまいました。
気兼ねなく語り合える友人と一緒の出張は悪くありません。彼は少々迷惑に
思ったかも知れませんが。
帰りは空港でおみやげを迷っているうちに、時間がすぎ、ボーディングタイムまで
5分しか残りませんでした。それでも、スタンドでチキンフライ(注4、5)
のサンドイッチを食べながら
エルディンガーのヴァイスビアを一杯飲んでから
、飛行機に乗り込んだのでした。
その間、S君はあきれていたでしょうが、黙って立って待っていてくれました。
なんだか、こうして書いてみると、やっぱり私だけ飲んでばかりいたようで、
まったく反省しきりです。
少しは周囲に気をつかうように
しなけりゃね。まだまだ、修行が必要ですね。
ずっと、仕事のプレッシャーでしんどかっただろうけど
ごめんごめん。悪かったよ、ははははは....。
4コママンガ<ハムとラン> とキャラのページ (c)Shimamura,T |
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注1)今回は
それぞれのビールに関する解説は省略します。 No.33 番外編・ミュンヘン紀行その2 ビール編を参照してください。
注2)初日、夜のマリエン広場で、
屋台でたくさんの白い太い棒が売られていて、なんなんだろう、と
思っていたのですが、ホワイトアスパラガスだったのです。先方の会社の
社員食堂でも、社員向けに特売していて、ナイロン袋に大量に買い込んでいる
人を何人も見かけました。なにしろ、でかい。
私はアオハタの缶詰のアスパラガスしか知らなかったし、
八百屋で売っているのはグリーンアスパラしか見たことなかったので、
新鮮な驚きでした。
今日(2004年5月3日)にカナート洛北で買い物をしていたら、
アスパラガスがたくさん売っていました。
注意して見てみたら、少しでしたがホワイトアスパラガスも売っていました。
これからブームになるかもよ。
参考資料1:
旬や話題 こだわり食材─「アスパラ」
つい最近まで、MSNのトップページからリンクされていました。栄養はグリーンの圧勝らしいです。
参考資料2:
食の挑戦者
NHKが6月1日に放送していたそうですが、何年の6月1日なんでしょうね。
参考資料3:
アスパラガスネット
注3)脳が働くエネルギー源は
ブドウ糖だけだ、と知られています。ロードマップや開発戦略など、
プレゼン資料の作成ばっかりしていて
頭が痺れてきたら、甘いものを摂取することで、
頭がよく働くようになる、ということです。炭水化物も麦芽糖を経てブドウ糖
として摂取されるので、きっと、ゴハンにウドンという昼食も
具合が良いのではないのでしょうか。
ビールとコーヒーばっかり摂取している私は、体調を心配してくれる
優しいメールをたまにもらったりなんかして、少し反省するところもあるので、
今後飲みすぎに注意する、とこのホームページで弱々しく宣言したこともある
のですが、まったく、実行できていません。
そこで、ゴハンとデザートをたっぷり食べればアルコールの量が減って、
頭も具合よく働くようになるし、一石二鳥、と考えたのですが、
これも、実行する勇気はありません。
参考資料1:
知っていますか? 製菓原材
料
−(社団法人 日本洋菓子協会連合会のコンテンツ)
参考資料2:
農畜産業振興機構・砂糖類情報
このページは少しヘンです。OPERAだとちゃんとコンテンツを辿れるのに、
IEではできません。フレームになっていたりなっていなかったりします。
すみません、ナゾが解けていないので、多くの人はカンジンの資料に
辿り着けないかもしれません。
注4)実はそこでのお目当ては
ヴァイスヴルストという真っ白なソーセージだったのです。鮮度の関係からか、
どのレストランでも午前中にしか食べられないらしく、
前回も食べ逃してしまったのです。だって、日中は仕事ですから。
前回の帰りに、このカウンターだけの
カフェバーのメニューにあったのを憶えていたので、今回は絶対、食べて帰るぞ、
と決心していたのです。で、短い時間を惜しんで寄ったものの、
白ソーセージは皮を食べないらしく、ナイフとフォークで上手に皮を剥がして
食べなければならないのです。5分で食べきる自信がなかったので、
結局、チキンフライのサンドイッチにしてしまったのです。ま、これも、どんな
味か一度試してみたく食べるチャンスを狙っていたので、満足しましたが。
いつかわからないけど、また行く機会があったら、次こそは絶対白ソーセージを食べてやる。
注5)向こうのレストランの味は
たいてい濃いのですが、デリカテッセンでのサンドイッチはすべて日本で馴染み深い
味でした。ホテルの朝食も、バイキング形式でしたが、ソーセージ、ハム、チーズ、トマト等、
キューリが無闇と大きい以外、大きさといい味といい、ほとんど違和感ありません。
コーヒーも同じような濃さで馴染み深いブレンドコーヒーの味だし、
スクランブルエッグなど、固さといい、塩かげんといい、日本で食べるホテルの朝食と、
まったく同じです。
チキンのフライもまったく想像通り。とにかくパンが美味しいので、いくらでも
食べれます。