パパーノなんなんでしょう

No.74
2006/ 1/16

Four in the morning, crapped out yawning, longing my life away
I never worry. Why should I?
It's all gonna fade
(Paul Simon, "Still Crazy After All These Years")

今回のなんなんでしょうは、
Bullets and Beer
です。


時の流れに

(1)年があければ

あと2005年度も3ヶ月、なぜか、この1月〜3月は短いのです。第一クオーターから第三クオーター (日本の年度で勘定しています)までも、忙しくて時間が飛ぶように過ぎていくのは確かで、 年末に車にはねられたことなども、遠い昔のことのように思います。 それにつけても、とみに、この第四クオーターは短く感じます。(注1
なぜなんだろう、と考えているうちに3ヶ月くらいすぐにたってしまいそうな気もしますが、ほんと、なんなんでしょうね。
今年度の終わりと来年度の準備でオーバーラップしているうえに、カレンダーでは年が変わっているので そんな気分になるのでしょう。実際正月から1月末までは正月気分、2月は28日しかないしバレンタインデーがあってドキドキするし、 3月はもう今年度は終わりの気分で、消化しきれない有給休暇をまとめてとったりなんかして、 そんなことから、多分、短く感じるのではないでしょうか。
「パパーノさん、昨日の晩は誰と一緒だったの?」
「ふ...。そんな昔のことは忘れたね。」
「だったら....。今晩は...あいてる?」
「そんな先のことはわからない。」
ただ、記憶力が弱く計画性がないだけだという噂も...。

(2)今年の一冊目の洋書

は、ハードボイルド小説のスペンサー・シリーズ、"School Days" で元旦から読み始めました。一日10ページで 1ヶ月で読み終えるつもりでいたのですが、いつもどおりに面白かったのと、 だいぶ慣れて読むスピードが上がってきたため、6日には読み終わってしまいました。
これは自分でもちょっと驚きです。(注2
前にも書きました(No.66 長考の構えNo.52 グルマンで行こう・アムステルダム編)が、 このスペンサーのシリーズは、なんと第一作が1973年で、 もう32年も続いている大河ドラマ的探偵小説です。今回読んだSchool Daysは、去年の秋に出版された のですが、実に32作目、もし、実世界と同じように 年をとったとすれば、スペンサーはもう70歳になっているはずで、どこからか年をとるのを やめてしまったようです。
スペンサーのシリーズは、単なる探偵小説ではなく、 プロとは何か、人生いかに生きるべきか、自立した男性と女性の恋愛の形はどうあるべきか、 というテーマが、スペンサーの生き様、恋人スーザンや友人ホーク、クワーク警部、 息子のようになったポールなど多彩で個性あふれる登場人物とのつきあいを通してよく書かれています。 特に、名作「初秋」までのシリーズの前半は、そのような色が濃く、 ときには、本筋から逸脱してスーザンとの会話が長々と続いたりします。
そしてスーザンがスペンサーから離れヤケのようにドンパチやっていた中期を経て、今は平穏なときを 迎えているようです。年はとらなくても、物語の時間は着実に流れていて人物も変っていきます。 前作の"Bad Business"もそうですが、今回も活劇のシーンはそれほどなく、また、いかに生きるべきか、 行動の規範を持つ人間とは、というような長い対話もほとんどなく、軽い探偵小説でした。
30年も続けていれば書くべきことは書いてしまったのかもしれません。そのうち、老いるとはどういうことか、 いかに年をとるべきか、年をとったときの恋愛はどうあるべきか、という壮大なテーマに取り組む 局面を迎えることになるのかも しれませんが、まだまだ、スペンサーも意気盛んです。しばらくは、大きな転回もなくこの調子で続くのでは。

(3)正月から

ピータードラッカーの本を2冊読みました。「はじめて読むドラッカー」という副題で、マネジメント編の 「チェンジリーダーの条件」と社会編の「イノベーターの条件」です。これまでのドラッカーの著作から、 選んで集めた論文集とでもいうようなもので、わりと読みやすく、すぐに読むことができました。マネジメント に関する論文を集めた「チェンジリーダーの条件」は、去年、実際に仕事で悩み体当たりしてきたこと、 そんな中でマネジメント関連の本を読んで勉強したこと、それらを復習しているようで、「なるほど、なるほど 、そうだ、そうだ」と頷きながら一気に読みきりました。いくらか、私の最近の状況をよく説明する 印象深い金言を引用しておきましょう。

「プロたるものは、医者であろうと、弁護士であろうと、マネジメントであろうと、依頼人に対し、必ずよいことをすると 約束することはできない。彼にできることは、最善を尽くすことだけである。」
「船が沈没しかけているときに、会議を開く船長はいない。命令する。」
「キャンペーンによるマネジメントを行っている組織では、キャンペーンに従って本来の仕事の手を抜くか、キャンペーン をサボって本来の仕事をするかいずれかしかない。・・・<中略>・・・キャンペーンによるマネジメントは、 当座しのぎのマネジメントと同じように、混乱の兆候である。無能の証拠である。」

「イノベーターの条件」は、少してこずりました。苦手な社会と歴史に関する論文を集めた、というだけでなく、論証よりも断定のほうが多く、なかなかすっと頷けないのです。でも、こういう本のほうが、新たな観点で ものを見ることができ、ひさびさに目からうろこが落ちた気がしました(注3)。 私たちが、なぜ、激しい競争に さらされるのか、それは知識社会になってきているからなのです。私たちの一人一人の持っている知識や ノウハウがすなわち生産手段であり、組織にとっての価値の源泉だということに気づかされました。 そして持っている生産手段(=知識や知識を持った人)をいかに成果に結びつけるか、という部分も、 人の力が多くを担っているのです。
しかしながら、知識やノウハウはその気になれば誰にでも手に入るものです。とくに、今のような情報社会に なれば劇的にそのしきいは低くなっています。だから、競争が激しくなる。 そして、このような知識労働者が急増したのはごく最近のことであり、組織のありようやミッション、そして、 組織の中の個人の役割や、それに対応した個人の仕事のスタイルは、単純に 過去と比較してよしあしを言うことはできません。生産の形態と付加価値の源泉が変った ことを理解しなければ、私達自身が、今、重要視すべき価値がわからないのです。 過去があって今があり、そして未来に続く。

(4)そういえば

この本は、京大病院に行ったときに(参考−No.55 病院へ行こうNo.65 病院へ行こう・2)待ち時間に読んでいたのですが、 京大病院といえば、驚いたのが、ドトールコーヒーが開店していたことです。

バブリーなエントランスがさらに美しく、病院じゃないみたいですね。 携帯で撮った写真なので、画質が落ちるのですが、ピカピカの床や柱が 強調され、かえって、海外の空港の午後のロビーのような ちょっと幻想的な美しい雰囲気が出ています。うまいところに目をつけたもので、 2006年1月12日の朝日新聞夕刊によれば、2005年10月の開店当初、 京都府のドトールの中でこの店が売り上げ一位になったそうで、今でも コンスタントに売り上げのトップクラスにいるらしいです。だいたい京大病院は予約システムが ほぼ完璧に機能しているので、それほど待ち時間が長いわけではないのですが、 それでも、利用する患者も多いようです。他にも入院患者だけでなく、職員や、 医者や看護士などがよく利用するようですね。 学校にマクドナルド、と同じ発想とはいえ、うまいところに目をつけたものです(注4)。
診察結果は、特に問題なし。X線検査も特に異常もなく、簡単な問診のみで この調子で吸入薬を使ってさらに改善しましょう、と簡単な言葉で励まされただけでした。 かなり悪かった去年の12月に比べて、この春からか、だいぶ良くなり、傍目には私の体が弱いとは ほとんど気が付かないほどです。

(5)さて今年の2月は、

トリノオリンピックもあるし、夢中にテレビにかじりついて、 昼は会社でも夢見心地で、いつにも増してあっという間なのでは。
いや、私はそれどころじゃないんですよ。来期の予算や計画そして体制について、毎日日替わりで 変更、変更、また変更、緊急事態に次ぐ緊急事態、資料作成、会議、資料作成、会議、 青色吐息の毎日なのですから。
「先月に出来るはずのサンプルができなかったのはなぜ?」
「そんな昔のことは忘れました。」
「ここに書いてある計画どおりに、あと2ヶ月で完成するのか?」
「そんな先のことはわかりません。」
「バカモン」
それはさておき、ウインタースポーツを楽しむ予定の人は気を付けてください。 無茶をすると骨折の危険がありますから。 手術で入院したりすると、ヒマでヒマでものすごく時間のたつのが遅くなることうけあいです。 スキーに夢中であっという間に過ぎるはずだったのにその落差が激しいことでしょう。
不思議ですよね。そんなタイクツな時間ほど、過ぎてしまうと、何をして何を考えていたのか ほとんど覚えていないのです。タイクツだったことさえも。そして、濃密な時間であればあるほど、現在は どんどん過去になっていきます。あんなに友達と飲みに行く日を待ち遠しく心待ちにしていながら、 飲んで話をしているといつの間にか、ほんとに飛ぶように時間がたって、一瞬のうちに帰らないといけない時間になる。 そして、気が付いてみれば、すでに、もう遠い過去になっているのです。遠い過去も近い過去もすべては過去です。

さよならをいうのはわずかのあいだ死ぬことだ。
「長いお別れ」(レイモンド・チャンドラー)


1月の初仕事は5日からでしたが、初日から22時まで仕事、祝日だった9日も出社しこの土日も午後だけですが、 ほぼフル回転でした。そんな中でも、本は元旦から上に書いたようにたっぷり読んだわけですが、実は誕生日プレゼントをあてにしてまとめて買っておいたんです。
「パパの誕生日プレゼントは手袋を買っておいたから、それでいいよね。」
「・・・・・。」
がちょーん。あれがプレゼントだったのか。来月の支払いは?そんな先のことはわからない。

本日16日にまた一つ年をとった

のですが、この調子では、また一年また一年とあっという間に時間がたって、もうすぐにでも死んでしまう かもしれません。
プレゼント募集中。


4コママンガ<ハムとラン> とキャラのページ
(c)Shimamura,T
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注1)

実際、一番短いのがこの1月から3月です。90日しかありません。第1クオーターは91日、第2Q、第3Qが92日あるのです。 第4Qも、うるう年なら91日ですけどね。それに、大型の連休は正月だけだし、稼働日を考えたら一番長い気もしますが。
あ、休みも関係ない私にとっては全部稼働日と考えればいいから、それは別段問題ないのか。
多分、休みが多くて一番短く、ほとんど授業も進まないのに期末試験だけはちゃんとある三学期の記憶が、 この第4Qを異様に短く感じさせるだけなのかもしれません。

注2)

2冊目の洋書はDouglas Adamsの"The Hitchhiker's Guide to the Galaxy"です。
去年、6月にドイツに出張に行ったときに、相手先のドクターのZ氏が勧めてくれた本です。
「何べんも読み返す価値のある本はなかなかないが、この本はまさにそういう本である、 是非、読んで感想を聞かせてほしい」
ということだったのですが、どうみても軽いSF小説で、そんな価値がある本とも思えなかったので、 ちょっと後回しにしていたのです。 今回、余裕があるので、早速読むことにしました。目標は2月11日、1日10ページ平均で読めれば いけます(進捗管理表)。なかなか面白く読み始めています。

注3)

巻末に付章として「もう一人のキルケゴール−人間の実存はいかにして可能か」という論文が載っています。 人間の自由とはなにか意志とはなにか、私が生きていることが 歴史的にどういう意義があるのか、言い換えると、自分自身の価値を歴史の中で最大限に生かすには どうあるべきか、という問いを深く考察した、その基盤の上にたっているところが、素晴らしい説得力を生む 源ではないかと感じました。欧米の考え方を理解するには聖書を読んで知っておくことが大事だ、と 聞いたことがありますが、ここにもそれが現れているように思います。

注4)

実は、同じ朝日新聞の記事によれば、 ドトールは97年に昭和大学病院(奇遇にも、私は小学生のころ、ここの喘息外来にも通っていた) に出店したのが最初で、現在京大を含め6箇所にあるそうな。他にもも東大病院にはタリーズ、 スタバも順天堂大学病院、シアトルズベストも鈴鹿回生病院に出店しているそうです。